授業の理解度を高めるためには予習することが望ましいが、苦手科目だと拒絶反応が起きてしまうもの。そんな子どもの重たい腰をあげる学習のコツを、心理学の専門家が解説する。本稿は、篠ヶ谷圭太『使える!予習と復習の勉強法――自主学習の心理学』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
苦手な科目の予習には
少し工夫が必要になる
予習で大切なことは授業で何をやるかを大まかに知っておくこと、知識の「なぜ」について疑問を持っておくことであって、予習では完璧に理解する必要はありません。
とはいえ、こうした予習でも「やりたくない」「ハードルが高い」という人はいるでしょう。特に、自分が嫌いな科目や苦手な科目については、予習の壁が高いと感じるものです。「算数や理科は好きで教科書を読むのも、問題を解くのもまったく苦にせずやっているけれど、社会科は嫌いで何をするにも抵抗を感じる」といった人もいるのではないでしょうか。
どうしたって私たちが興味を持つものは人それぞれです。得意不得意、好き嫌いがあります。では、どうすれば苦手な科目や嫌いな科目の予習ができるようになるでしょうか。
教育心理学では学習行動には「役立ち感」と「負担感」が影響しているということが知られています。役立ち感とは「これは役に立つ、効果がある」という感覚を指します。専門用語では「有効性の認知」といいます。負担感は、「これは大変だ、面倒だ」という感覚です。こちらは「コストの認知」と呼ばれます。みなさんの想像通り、私たちは役立ち感を感じる方が、また、負担感が低い方が、その学習行動をとるようになります。
要は、やる価値がある、自分にとって意味のある行動だと思えれば、学習するわけです。逆に、負担感を感じるほど学習行動にうつろうとしなくなります。大変だとかめんどくさいと思ったらやっぱりやりたくないのです。
このことは、ダイエットに置き換えてみればわかりやすいでしょう。「1日1000回の腹筋を毎日続けましょう」と言われても、そんな方法はまったく採用する気になりませんよね。なぜなら、「役立ち感」は感じられるかもしれませんが、「負担感」がものすごく高くて、「とてもじゃないけど自分には無理だ」と思ってしまうからです。
予習にも同じことが言えます。筆者は予習をする人としない人では何が違うのかを調べるため、高校生にアンケート調査をしました。その調査では予習に対して役立ち感を感じているほど、そして予習に対して負担感を感じていない人ほど予習をしていることがわかりました。先ほど説明した役立ち感や負担感が高校生の予習行動に影響することが実証的に示されたわけです。