ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務しPRトップをつとめ、「もっともパリジェンヌな日本人」と業界内外で称された藤原淳氏が、パリ生活で出会った多くのパリジェンヌの実例をもとに、「自分らしさ」を貫く生き方を提案したのが、著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』。著者が言うパリジェンヌとは、「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出し、人生イロイロあっても肩で風を切って生きている人のこと。この記事では、本書より一部を抜粋、編集しパリジェンヌのように自分らしく生きる考え方をお伝えします。

「自分にとって心地よい生き方」のため、パリジェンヌが大切にしていることPhoto: Adobe Stock

「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出すパリジェンヌ

 マスクを外す勇気がない。自分をさらけ出す覚悟がない。でも、どうしたらもっと世間の目を気にせず、周りの期待に流されず、自分なりの生き方を貫くことが出来るのか。そう思っている人、多いと思います。私はその秘訣をパリジェンヌの生き方に学びました。

 私がここで披露するのは「取っつきにくいのになんだか憎めない、ボサボサ髪なのに妙にかっこいい」本物のパリジェンヌです。一切取り繕わず、「すっぴん=ありのままの自分」をさらけ出し、人生イロイロあっても肩で風を切って生きている、共感度100%の爽快なパリジェンヌです。ですから、これまで世の中に出回ってきた「お洒落なフランス人」の本に比べると、かなり異質かもしれません。

 私は大学生の頃、フランス語の美しさに魅了され、オタクのようにフランス語を勉強しました。寝ても覚めてもフランス語の毎日。そんなある日、朝日新聞が主催する「コンクール・ド・フランセ」というスピーチ・コンテストに参加し、準優勝しました。賞金はなんと、パリ往復航空券と2ヵ月の語学研修。数ヵ月後、憧れのパリに飛び立ちました。
 すっかりパリに心を奪われた私は大学卒業後、再び渡仏し、パリ政治学院に進学しました。そして卒業後、在仏日本国大使館で専門調査員としてフランスのメディアを担当し、広報活動に3年間従事しました。

もっともパリジェンヌな日本人

 任期が切れた頃、まだまだパリに残りたかった私は、広報の経験を活かそうと、ラグジュアリーブランドの最高峰であるルイ・ヴィトンのパリ本社に入社しました。2004年のことです。それまでヨーロッパ各国の学生や在仏邦人との付き合いが多かった私ですが、そこで出会ったのは、私が抱いていたイメージとは全く違う、泣く子も黙るパリジェンヌでした。驚きと戸惑いの毎日が始まりました。

 その後、出世の階段を上った私は2007年にPRマネジャー、そして2010年にPRディレクターに昇進。2018年にはチャリティーや異業種とのコラボを担当する新部署の立ち上げ、初代ディレクターにも就任しました。けれども私が誇りに思うのは、世界一のブランドに20年弱勤めたことでも、出世したことでもありません。私が自負しているのは、その過程で「もっともパリジェンヌな日本人」と業界内外で称されるようになったことです。

 入社してからというもの、数千名のゲストをお呼びするイベントを2週間以内で立ち上げたり、インフラ整備が不十分なイースター島やキューバにファッションやアート関係の記者を招待するプレス・ツアーを企画するなど、幾つもの修羅場を潜り抜けているうちに、私も面の皮が厚くなっていきました。取り繕う余裕すらなくなった時、真のパリジェンヌになっていたのです。

誰でもパリジェンヌらしく生きることができる

 ここでいう「パリジェンヌ」とは感性であり、態度であり、私のようにフランス人ではない人、パリに生まれ育っていない人、さらに言ってしまえばパリに住んでいない人でさえ共感することができる、ある種の生き方のことです。つまり、誰でもパリジェンヌらしく生きることができるのです。「すっぴん=ありのままの自分」を受け入れ、さらけ出すだけで気持ちが吹っ切れ、世間の目が気にならなくなるのです。

 念のために申し上げますが、私は「フランス人のようになりましょう!」などと言う気はありませんし、「日本人ってダメ」とお説教をする気もありません。日本人独特の心遣い、気配り、おもてなしの心は世界で類を見ない素晴らしいものです。

 私は現在、ルイ・ヴィトンを退社し、ライフワークとして日本人の素晴らしさ、日本の良き生活習慣を紹介する本をフランス人向けに執筆、出版しております。自分の権利を主張する前にまず社会の調和を考える日本的なあり方は、フランス人にとってはお手本になることが多いようです。