6月4日からは「歯と口の健康週間」だ。近年、話題にされる機会が増えた「オーラルフレイル」をご存じだろうか。
オーラルフレイル(OF)はかむ、飲み込む、話すといった口腔機能が衰え、「口腔機能低下症」リスクが増大している状態を指す。健康の基本である食事や人との交流に支障が生じ、健康寿命にも悪影響を及ぼしかねない状態だ。
国内の研究では、OFの人が4年以内に要介護状態に陥るリスクは、非OFの人の2.4倍、死亡リスクは、およそ2倍に上昇することがわかっている。お口の衰えを侮ってはいけないのだ。
神奈川歯科大学の研究グループは、県内の歯科を受診した成人を対象に、OFリスクを炙り出す8項目の質問票(OFI8)を用い、意識調査(調査期間:2020年6月~21年3月)を行っている。解析対象の5051人の平均年齢は59.9歳、女性が6割を占めた。
OFI8は「半年前と比べて硬いものが食べにくくなった(はい:2点)」「お茶や汁物でむせることがある(同)」などの8項目から成り、合計4点以上でOFのハイリスク群となる。
対象者のうち、4点以上の回答者は1418人で、およそ3人に1人がOFのハイリスク群だった。またOFに関する知識がない場合、知識がある人よりも、有意にハイリスク群が多かった。
OFの認知度が低い人の属性は、高齢、男性のほか、運動習慣がない、バランスの良い食事を心がけていない、など健康への関心度が低い可能性が指摘されている。
今回の調査で気になるのは、20~39歳の6%、40~49歳の10%、50~59歳の16.9%がすでにOFハイリスク群だったことだろう。
老化による生理的な衰えとみなされがちなOFだが、実は貧困や引きこもりなどの社会的要因、抑うつなど精神症状も発症リスクになり得る。若年者も無関係ではないのだ。
OF予備群か否かを調べるには、OFI8を試すほか、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ1秒間に6回以上、発声できるかを確認してみること。芳しくない場合は最寄りの歯科で相談しよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)