おなかぽっこりの人に多く見られるメタボリックシンドローム。会社や市区町村の特定健診で発見されます。歯周病などで歯がグラグラになったり、歯が抜けたりして食べ物をしっかりかめなくなると、メタボリックシンドロームになりやすいことがわかってきました。詳しい内容について若林健史歯科医師に聞きました。
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メタボリックシンドローム(以下、メタボ)はおなかのまわりにつく内臓脂肪が蓄積された「内臓脂肪型肥満」(腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上)に加え、高血圧、脂質異常、高血糖のうち二つ以上があてはまる状態をいいます。いずれも血管が老化し、硬く、もろくなる動脈硬化の危険因子です。動脈硬化が進むと心筋梗塞や狭心症などの心臓病や脳出血、脳梗塞などの脳血管疾患が起こりやすくなります。
内臓脂肪型肥満、高血圧、脂質異常、高血糖のうち、危険因子が一つでもあれば、心臓病や脳血管疾患を発症する確率は約5倍、3~4個あれば、36倍にもなるという報告があります。
厚生労働省2020年度「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」によれば、特定健康診査(いわゆるメタボ健診)を受けた約2890万人(40~74歳)のうち、男性ではメタボに該当する人の割合が24.8%、予備群は18.3%(女性は該当者7.2%、予備群5.9%)。男性では予備群を含めると半数近くがメタボという、ちょっとびっくりする数字です。私も実は最近までメタボを指摘され続けていましたので、ひとごとではありません。
このメタボと歯の関係について、新潟大学医歯学総合研究科包括歯科補綴(ほてつ)学分野の小野高裕教授らの研究グループが、「よくかめない男性はメタボになりやすかった」という、興味深い研究結果を報告しています。
研究の概要は、大阪府吹田市の地域住民から無作為に抽出した対象者のうち、メタボでなかった50~70代の男女599人の咀嚼(そしゃく)能力を測定した上で、平均4.4年間追跡。その結果、男性においてはかむ力が低い人たちの群は、そうでない群に比べメタボになった割合が2.2倍高く、特に血圧高値、高中性脂肪、高血糖の割合が有意に高いことが明らかになったのです。