まったく共感していないのに「あなたもそう思うでしょ?」と言われたとき、感じのいい人はどう切り返す?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。
「共感」と「同感」
「共感が大事というのはわかりますが、まったく相手の意見に共感できないときは、どうしたらいいですか?」
これは、1on1研修を行った際に、参加者さんからいただいた質問です。
そのとき、「共感」と「同感」が一緒になっていた、かつての私を思い出しました。
この二つ、実は似ているようで異なるのです。
私が学ぶアドラー心理学では、「共感」を「相手の関心に関心を持つ」と言っています。
たとえば、ゲームが大好きという後輩の話を聞いたとします。
私はゲームをしないので、その場でゲームを好きになる、つまり同感することはできません。
ただ、相手のゲームへの関心に関心を持つことならできます。
「ゲームが好きなのね」
「どんなところが好きなの?」
「いま、どんなゲームが流行っているの?」
という質問だったらできます。
「そうは思いません」に変わる言い方は?
その2つの違いを知らなかったころ、クレーム対応時に、立腹されたお客様から「あなたも私の立場だったら、そう思うでしょ?」と言われることがありました。
同感できませんでしたし、アメリカから戻ったばかりでNOをはっきり言っていた私は、「そうは思いません」と答え、よくお客様を怒らせていました。
今ならば、きっとYESもNOも伝えず、「肯定してほしい」という相手の関心に関心を寄せることができるでしょう。
たとえば、
「そうですね…。そういうお気持ちにもなりますよね。
お客様が不愉快な思いをされたことが伝わってきます。
そこでもう少し伺いたいのですが…」
などと、さらに相手の関心に関心を寄せて、話を進めると思います。
大事な友人からの相談で、「あなたもそう思うでしょ?」と同感を求められることもあると思います。
そのとき、あなたが、YES/NOで答えにくい内容ならば、
「そうね…。そう言いたくなるよね。もう少し聞かせて?」
というように「共感」を寄せてみるといいと思います。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。