今年は公的年金財政検証の年
議論封印された「老後2000万円」問題
今年は、5年に一度、百年先を見通した公的年金財政の持続性を検証する年になり、専門家らによる、経済成長率や実質賃金など、検証の基礎になるマクロ経済の変数の検討結果を元に作業が始まっている。
前回の年金財政検証の年だった2019年には、金融問題調査会が老後の生活資金に関するレポート「高齢社会における資産形成・管理」を作成した。
その内容を、朝日新聞が「人生100年時代の蓄えは?年代別心構え、国が指針案」との記事(2019年5月23日付け)で掲載し、それをきっかけに「老後のために2000万円必要」との騒動が起きた。
「政府は100年安心年金と約束しているのに、年金だけでは老後生活を送れないというのは、公約違反だ」とする意見が起こり、国会でも問題となった。結局は、麻生太郎・金融担当相(当時)が、提言の受け取りを拒否するという異例の事態になった。
政府は、その年の秋の総選挙でこの問題が政治問題化するのを恐れたのかもしれない。しかし、問題にされるから議論を止めてしまうというのは、おかしな話だ。老後生活資金の問題は、全ての国民が強い関心を寄せている。
重要な問題だからこそ、本当に必要な老後資金はいくらなのかは徹底的に議論をすることが必要だ。