横軸は、経済問題についての右と左の対立である。これは、次のような命題に対する回答(はい/いいえ)によって区別することができる。(1)所得税の累進性をもっと高めるべきである(計画経済)、(2)外国人労働者をもっと受け入れるべきである(自由経済)、(3)公務員の数を減らして政府予算を減らすべきである(自由経済)、(4)気候変動に対処するためにガソリン税を高くすべきである(計画経済)、(5)公共事業の予算を減らすべきである(自由経済)。
これに対して縦軸は、社会問題についての右と左の対立である。これは、次のような命題に対する回答(はい/いいえ)によって区別することができる。(1)天皇制を廃止すべきである(反権威主義)、(2)憲法9条に自衛隊の存在を明記すべきである(権威主義)、(3)学校の校則を厳しくすべきである(権威主義)、(4)議員の数を一定割合で女性にすべきである(反権威主義)、(5)国旗掲揚と国歌斉唱を公的行事として義務づけるべきである(権威主義)。こうした命題に対する回答から、私たちは自分の政治的立場を明確にしていくことができるだろう。
座標軸で分析した
各国の政治の在り方
この図で、権威主義的右派は、権威志向で自由経済を支持する立場である。権威主義的左派は、権威志向で計画経済を志向する立場である。リバタリアニズムは、権威を批判して自由経済を支持する立場である。そして左派リバタリアニズムは、権威を批判して計画経済を志向する立場である。このようにポリティカル・コンパスは、政治的立場を4つに分けて捉える。
近年の政治的な対立は、このポリティカル・コンパスで見ると、権威主義的右派の内部で争われるようになってきた。例えば2020年の米国大統領選では、共和党のドナルド・トランプと民主党のジョー・バイデンのあいだで熾烈な選挙戦が繰り広げられたものの、2人の立ち位置はほとんど変わらなかったとの分析がある。