左右写真はイメージです Photo:PIXTA

日本国民の政治への無関心さは度々取り沙汰される。ゆえに、いざ「右派、左派どちらですか」と聞かれた場合に「どちらでもない」と答える人も多いだろう。しかし、いい大人になれば政治に無関心ではいられない。政治的な立場を明確にするための指針、ポリティカル・コンパスについて解説する。※本稿は、橋本努『「人生の地図」のつくり方――悔いなく賢く生きるための38の方法』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

あなたは右派?左派?
ポリティカル・コンパスの活用

 政治的な立場は、「右(派)」と「左(派)」に分かれるといわれる。あなたの政治的立場は、右と左のどちらに近いだろうか。「どちらともいえない」という、中間的な立場だろうか。ところが政治は厳しい世界である。自分のスタンスを明確にしないと、日和見主義ではないかと疑われる。信念のない、妥協に長けた策略家とみなされたりして、なかなか影響力をもつことができない。

 右派と左派の対比は、私たちの人生観の違いを表してもいる。例えば右派は、生存競争のなかで必死に生きるべきだと発想するのに対して、左派は、できるだけ多くの人々と助け合いながら生きるべきだと発想する。どちらの考え方も、私たちの基本的な心理に根差しているだろう。私たちの心のなかには、右と左の要素がそれぞれある。私たちはこの2つの考え方のあいだで、揺れ動きながら生活している。

 それでも政治の世界では、あえて右と左に分かれて、実現すべき政策をめぐって政治家に争ってもらいたい。右と左の双方が真剣に議論を交わして、それによって論点が明確になると、私たちは議会制民主主義を通じて、よりよい政策を手にすることができるからである。

 政治における右と左を考えるときに役に立つのが「ポリティカル・コンパス」(注:1950年代に、心理学者のL・ファーガソンとH・アイゼンクによって、それぞれ考案された。これらの理論は「政治的スペクトル」と呼ばれるが、2000年にW・ブリッテンデンが、ネット上でクイズ形式の診断をできるようにすると、これが「ポリティカル・コンパス」と呼ばれるようになった)である。右と左の対立は、2つの対立軸に分けて捉えることができる。1つは、経済問題についての「右(自由経済)」と「左(計画経済)」である。もう1つは、社会問題についての「右(権威志向)」と「左(反権威志向=リバタリアン)」である。この2つの対立を組み合わせると、ポリティカル・コンパスと呼ばれる4象限の図になる(図参照)。

図表:ポリティカル・コンパス(筆者作成)同書より転載 拡大画像表示