「もしかして怒ってる?」SNSの不安あるあるに「ロッチと子羊」がズバッと回答

中学高校生ともなると、悩みのタネは尽きないもの。大人が読んでもタメになるさまざまな解決のヒントを、古今東西の哲学者の考えを引きながら伝授しよう。本稿は小川仁志、『ロッチと子羊』NHK制作班『『ロッチと子羊』で学ぶ中高生のための哲学入門:君のお悩み、哲学プラクティスで解決します。』(ミネルヴァ書房)の一部を抜粋・編集したものです。

思いが募るあまりに相手を
独占したくなってしまったら

中高生の悩み
私には親友がいますが、その親友が他の人と遊んでいると嫉妬してしまいます。結果、親友から「ウザい」と言われてしまいました。親友といい関係でいるためには、どうしたらいいでしょうか。

 お互い、嫌いじゃないんだけど、気持ちの両立がなかなか難しいですよね。

 そんなお悩みにぴったりの哲学者を紹介したいと思います。日本の哲学者・九鬼周造(1888-1941)です。日本独自の「いき」という概念を応用して、上手くいく人間関係を考え抜きました。「関係性のスペシャリスト」と言っても、過言ではありません。

 九鬼の哲学を要約すると、こんな感じです。「良い関係を続けるのに一心同体を目指す必要はありません。絆を深めるには『いき』が大切なのです」。

 親友と「仲良くやっていきたい」と思うことは自然のことと思いますが、だからと言って、「一心同体を目指す必要はない」と九鬼は言っています。

 では、「いき」とはどういう意味でしょうか。そもそも九鬼が「いき」を研究したのはヨーロッパに留学していたときに気がついた「西洋」と「日本」の表現方法の違いからでした。

 たとえば、お祝い事の場合、西洋だと祝うなら祝う、祝わないなら祝わない。つまり、曖昧な表現はせず、白黒ハッキリさせる文化です。

 一方、日本は、「おめでと〜」と言うでもなく、そうかといって思いを伝えないわけでもない。白か黒かではなく、どっちつかずの曖昧な表現を良しとする文化です。この感覚こそが「いき」。日本人独自のものなのです。

 しかし、これは決して妥協のような、ネガティブなものではありません。「いき」を人間関係に用いると、魅力が「増し増し」になるんです!

「媚態」「意気地」「諦め」で
「いき」な友だち関係を目指そう

「いき」な関係とは、魅力が「増し増し」になる、ポジティブで豊かな関係性のことだと言っていいでしょう。単なる中間ではなく、絶妙ないい塩梅。「いききらないのが『いき』」なのです。

 もともと九鬼周造は、芸者と客の関係性から「いき」の着想を得ました。客がいつでも、どこでも、芸者に会えるようになってしまったら、燃えていた思いもなくなるかもしれません。絶妙な関係の方が、ずっと好きでいられる。「いき」な関係とは、敢えて距離を置くことで思い続ける関係なのです。