圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、FIDIAのグループ会社AsFineで代表取締役を務める吉田誠司氏。吉田氏は著者の森氏と共に数々の事業の立ち上げに関わり、現在は障がい福祉事業を任されている。そんな吉田氏は『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。今回は吉田氏に、働きやすい職場をつくるために大切なことを聞いてみた。

働きにくい職場をつくってしまう人の共通点Photo: Adobe Stock

働きやすい職場をつくるため大切なこと

――障がいを持っている人との職場づくりは、具体的にどのように行っているのでしょうか?

吉田誠司(以下、吉田):まず大事なのが「正しさを押しつけない」ということです。
「正しさ」を押しつけてしまう人がいると、職場づくりがうまくできません。
当社の障がい者支援事業である「AsFine」の利用者は、精神障がいの方が多いのですが、「仕事はこうやってするべき」という思いが強すぎ、利用者同士でケンカになってしまうこともあるのです。

たとえば、一般的には遅刻いけないものですが、遅刻をしたときに、「遅刻が悪」「時間を守る事が善」としてしまうと対立構造が生まれ、ケンカになります。
これでは安心できる職場環境とはいえません。

僕たちは利用者側それぞれの言い分をしっかり受け入れながら、「言っていること自体が正しくても、暴言は許されない」と、職場のスタンスをはっきりさせています。
同時に、本人が正しいと思い込んでいることを解きほぐすことも重要な仕事だと思っています。

――正しいという思い込みを、どうやって解きほぐすのですか?

吉田:たとえば、「仕事中は雑談をするべきではない」という人がいたとします。
それが原因でトラブルになった場合、まずは「なぜそう思うのか」、しっかり聞きます。
思いを受け入れた後、僕らは「人間関係を円滑にするためには雑談も必要なことかもしれないですね」と伝えます。
別の視点から考えてもらうことで、思い込みを解きほぐせるようにするのです。
たとえすぐ納得してもらえなくても、根気よく伝えることが大切。伝えるときは必ず「思いをしっかり受け入れること」をセットにしています。

受け入れることができれば障がいはなくなる

――思いを受け入れることも簡単ではありません。コツはありますか?

吉田:受け入れることができないのは、理解することが難しいから。ですから、「理解しようとすること」がなにより大切です。
もちろん、僕もすぐにできるようになったわけではありません。
利用者の方々と接していく中で、少しずつ許容範囲が広がってきたように思います。

常識的におかしいと思っても、相手の話をきちんと聞いてみると、それなりの理由があるものです。
障がいのある方の苦しみの根底には、「理解してもらえない苦しさ」があると思います。
極端な話かもしれませんが、社会全体が障がい者を100%理解して受け入れることができれば、障がいは障がいではなくなると思うんです。

ただ、もちろん簡単なことではありませんから、僕たちも障がいのある方を積極的に理解しようと努めます。
逆に障がいのある方が、会社や社会に対して障がいのことを理解してもらいやすくするために、「伝える方法」なども支援しています。

――障がいのある方と健常者で常識が違うこともありますか?

吉田:たとえば、こちら側が「遅刻はNG」という常識で相手に接していくと、人によっては「1分でも遅刻したら、自分は人間失格なんだ」と追い詰めてしまうケースもあります。
互いの常識が同じでも、障がいの種類によって、極端に捉えてしまう場合がある。

そんなときは、「思い詰めて考えてしまう癖がある」ことを受け入れつつ、「そこまで追い詰めなくて大丈夫ですよ」と伝えます。
思い詰めてしまうのは、障がいの特性による影響が大きいので、考え方を変えるのはなかなか難しい。ですから、「遅刻をしないようにするにはどうすればいいか」ということも含め一緒に考え、支援につなげています。

障がいのある人に限らず、互いの個性をしっかりと理解しあうのは職場づくりでとても重要です。
一方的に職場のルールを押しつけるだけでなく、それぞれ個人の特徴を理解しながら職場のルールを理解してもらう。
互いの理解が進むことで、働きやすい職場がつくれると考えています。

最後に、『スタートアップ芸人』には、社員の個性を活かしながら職場をつくっていくエピソードだけでなく、仕組み化するノウハウもあるので、職場づくりに悩んでいる方には大いに参考になるかもしれません。