圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏から「僕に足りないものをみんな持っている」と言われたのが、FIDIA(フィディア)No.2で、Luvir Consulting(ルヴィアコンサルティング)CEOとして活躍する中川裕貴氏だ。中川氏は、FIDIAの年商を60億から100億円へと引き上げたレジェンドでもある。そんな中川氏がFIDIAに導入した制度の一つが合宿制度。今回は「チームに一体感がないと愚痴る人が見落としている習慣」について中川氏に聞いた。(構成:陽月よつか)

「チームに一体感がない」と愚痴る人が見落としている習慣・ワースト1Photo: Adobe Stock

会社に合宿制度が必要な理由とは?

――中川さんがFIDIAに合宿制度を提案したのは、どんな理由だったのでしょうか?

中川裕貴(以下、中川):僕が加入した当時、FIDIA(当時の社名はSuprieve株式会社)は、いろんな事業をやっていたんです。人材事業、企画開発事業、メディア事業、そのほかにもいろいろあって。なのにみんな、隣の事業が何をしているか知らなかった。隣の組織にどういう人材がいて何をしているのかわかりませんという縦割りの組織だったんです。

必ずしも縦割りの組織が悪いわけではないのですが、社長の森さんの中では「One Suprieve」という思いが強かった。これは今も変わらず、「One FIDIA」という行動指針になっています。僕らの会社はいろいろな事業をやっているけれど、そのすべての事業は手段であって、最終的には「FIDIAとしてこういう状態を築きたい」という目標が当時からあったんです。

――各事業の目標や結果があったうえで、「FIDIA全体として」の目標ですか。

中川:はい。今は「さあ、わくわくを創ろう」というミッションを掲げているんですが、当時から「FIDIAグループとして高みに行きたい」という思想があった。

でも、その森さんの思想に対して、事業間でセクショナリズムが働いてしまい、ちょっとかみ合わなっていない状況だった。

そこで僕は、合宿という場をつくり、「会社としてどこを目指しているのか」「会社として何を大切にしているのか」について、じっくり意識のすり合わせをしましょうという提案をしたんです。

――会社全体の思想や意識をみんなに伝えるための合宿をしましょう、と。

中川:そうです。森さんはずっと「会社をこうしていきたいんだ」「こういう会社をつくりたいんだ」と方向性やビジョンを語っていたんですが、それぞれの事業が縦割りだと、そういう意識も共有できていなかった。各事業にはそれぞれの事業目標があったのですが、そこまでで話が終わってしまっていた。

たとえば人材事業だったら、「たくさん人を採用して2000人の派遣会社をつくる」。化粧品事業だったら、「Amazonで年間1位を取り、また新しい商品を出して、シャンプーをより多くの人の手に届ける」などです。

その上にもう一個、それぞれの結果を出し合った集合体としての「こういう会社をつくりたい」という目標があるわけですから、特に事業責任者たちにはその目標を常に意識してもらう必要がある。そのための意思統一の合宿をしましょうと、僕から提案したんです。実際に合宿をやったのは、ちょうど僕がコンサルで入り始めたときからですね。

――規模はどれくらいでしたか?

中川:参加者は20~30人ぐらいですね。その人数で、一泊二日の合宿をします。
各事業の責任者とNo.2、それに将来の幹部候補や事業を引っ張っていく人たちにも参加してもらい、いわゆるFIDIAイズムを体感してもらったんです。

合宿の目的は、2つあります。
1つは「One FIDIA」の醸成。自分たちが一つのチームであるという仲間意識や考え方を育むこと。
もう1つは、各事業のコミットメントです。

コミットメントを通して目標に使命感を抱く

――各事業のコミットメントとは、どんなことをするのでしょうか?

中川:毎年、合宿は決算の後です。6月末に年度を終え、7月の年度はじまりに合宿をします。そこで事業部ごとに、前期の振り返りや今期の計画を発表するのです。
各事業でスライドを使って発表しながら、役員や他の事業責任者たちの前で次年度の目標をコミットするんです。
コミット内容は宣言して終わりではなく、その後も事業ごとに月例会で確認していきます。
月ごとの計画と実績のギャップ、いわゆる「予実」のギャップの理由を共有します。役員たちも何人か参加し、こういう形で課題解決してはどうか、こんなふうに軌道修正しては? など、ディスカッションしていくんです。

――合宿でコミットした内容を、月例会でもディスカッションするんですね。

中川:そうです。でも、月例会で軌道修正するにも、合宿がないとコミットメントが生まれません。事業計画をみんなの前で宣言するからこそ、「きちっとこれをやりきらないといけない」という強い意識が芽生えるのです。

たとえば、今年の目標がフルマラソン完走なら、自分の心の中だけでそう思っておくのと、みんなの前でそれを宣言するのとでは「やらないといけない」という使命感が大きく違ってくると思うんです。
その分、合宿の準備は結構大変です。

各事業部も発表の準備に相当時間がかかりますし、合宿のファシリテーターは僕がやっているんですが、それを考えたりするのも結構大変です。
ですから、合宿は年1回でいい(笑)。
頻度については役員同士で話し合ったりせず自然に決まったんですが、ベストじゃないかなと思っています。

会社全体で信頼関係を築きたいと思ったら、真っ先にやっていただきたいのが、メンバーを厳選した「合宿」です。
日頃からいろいろな経営者にお会いしますが、「どうもチームの一体感がなくて」と嘆いている人に欠落しているのが、年1回の合宿という視点かもしれません。
どうすれば効果的な合宿ができるか。詳細は『スタートアップ芸人』にあるのでぜひ参考にしてみてください。