化石燃料利用の段階的廃止を目指す運動は、人工知能(AI)革命と衝突する方向にある。大量のエネルギーを必要とするAI技術は、電力網への依存度を高めつつある。そしてその電力網の多くは、石炭と天然ガスによる発電に支えられている。石油・ガス・パイプライン分野の企業は、シリコンバレーの未来に関わる重要なカギを握る。しかし、化石燃料によって生み出される安価で信頼性が高い豊富な電力を入手するという問題は近い将来、アップルやグーグル、マイクロソフトなどの企業にとって大きなリスクになるだろう。気候変動が破滅的状況を招くという主張の活性化に、こうしたハイテク大手が一役買い、ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けたエネルギー転換を提唱しているのは皮肉なことだ。シリコンバレーのハイテク企業は長年、化石燃料の生産・精製・輸送に反対する政治・文化的活動に資金を提供してきた。半導体チップやiPhone(アイフォーン)、インターネットなどをわれわれにもたらしてきた聡明な人々は今や、最新の革新的技術を加速させるためのエネルギーを奪い合う状況に追い込まれようとしている。