「数百万ドル×数十万時間」の価値のある知識

 自分の内面や周囲の環境から受ける影響をコントロールできる人は、低次元の本能に引きずられることなく、自らの生物学的状態を改善できるようになる。

 生物学的に考えられるあらゆる手段を使ってパフォーマンスを改善することを「バイオハッキング」という。僕はその体系化を試みている。そこでは、「生物学的状態」には、身体、脳、精神までのすべてが含まれる。もちろん僕がそんなことを言わなくても、はるか昔から、学者も科学者も仏教僧も理想の生物学的状態を探求しつづけてきた。

 最高の人間になるためには、望ましい環境をつくって、自分自身をコントロールする必要がある。この本には、人生を変えるための42のハックが紹介されており、どこから手をつければよいかを探すことができる。僕はどのインタビューもおよそ8時間かけて準備している。それが450人だから、この本は丸2年のフルタイムの仕事に相当する3600時間もの研究が濃縮されていることになる。

 20年前この本に載っていることを知っていたら(そして聞く耳を持っていたら)、どんなに人生が違っていただろう……と僕は思う。あのころは不幸で、太っていて、のろのろとしていた。間違ったものを追いかけ、それを手に入れては「なぜ満足できないのだろう」といぶかっていた。人生は悪戦苦闘の連続だった。20年前に本書の情報があれば、数百万ドルと何年間もの無駄な労力を節約できたはずだ。

 それでも、そんな苦闘の日々に感謝している。もしそれがなければ、学んだことをあなたとシェアすることもなかったのだから。

 あなたはいま、貴重な教えを伝える恩送りの輪の一員になろうとしている。本書のページに盛り込まれた知見は、一人ひとりの専門家がそれに注いだ時間を足し合わせれば数十万時間にも上る研究、実験、そしてそれらの結果の集大成だ。学校で教えてもらえることではない。専門分野で成功した人びとから、直々に伝授される真の秘訣である。

 たとえわずかでも、いまより賢く、速く、幸せになれたら、人生は大きく変わる。自分の人生だけでなく、世界をより良い場所に変えることができるだろう。本書の法則を実践する人が増えれば増えるほど、人間であることの新たな意味が見えてくるはずだ。あなたにもぜひゲームチェンジャーの仲間入りをしてほしい。それがこの本を書いた僕の願いである。

(本原稿は、『シリコンバレー式超ライフハック』〈デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳〉からの抜粋です)