『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行される。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名な「ガンジー」のことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、その一部を特別に公開する。
ガンジー流の怒らないトレーニング
「バプジ(おじいちゃん)、僕は怒りに負けない強い心を手に入れたい! そのためにどんな訓練をすればいいの?」
バプジが教えてくれた方法は、とてもシンプルだった。静かでじゃまの入らない部屋に一人で座り(現代社会では、何よりもまずスマートフォンを持ち込まないこと!)、何か美しいもの(たとえば花)を目の前に持ってきて見つめる。本物の花がなければ、花の写真でもいい。そして一分以上、目の前の美しいものだけに意識を集中する。それから目を閉じ、さっきまで見ていた美しいものを、できるだけ長く思い浮かべる。
最初のうちは、目を閉じるのとほぼ同時に、美しいもののイメージも消えてしまうだろう。でも訓練を続けていれば、イメージが頭の中にとどまる時間が長くなる。それはつまり、雑念にじゃまされず、自分の精神をコントロールする力を手に入れたということだ。
そしてもっと成長したら、訓練の第二段階に進むことができるとバプジは教えてくれた。
また静かな部屋に座り、目を閉じて、今度は自分の呼吸だけに意識を集中する。ただ吐く息と吸う息のことだけを考え、それ以外のことは一切考えない。
この訓練を行えば、自分の反応をコントロールする力が身につき、怒りにまかせて衝動的な行動を取らなくなる。
その翌日から、私はバプジに教わった訓練を始めた──そして今でも続けている。この訓練は、私の知るかぎり、精神をコントロールするいちばんの方法だ。
(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)