圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、FIDIAの執行役員CHRO(最高人事責任者)であり、グループ会社の人材事業「Evand」で代表を務めている石田優太郎氏。「人の辞めない人材会社をつくりたい」という想いを胸に、Evandの年商を65億円まで成長させたキーマンだ。そんな石田氏に、やる気やモチベーションに頼らず仕事をする方法について伺った(ダイヤモンド社書籍編集局)。

【NG】「モチベーションを上げろ」が最悪という深いワケPhoto: Adobe Stock

モチベーションは感情に左右される不安定なもの

――95%を超える定着率と、年間2000名を超える採用力を誇るEvandですが、新卒・中途を含め、正社員雇用で多くの人材が入社しています。新入社員教育ではどのようなことをされているのでしょうか?

石田優太郎(以下、石田):正社員型派遣(正社員として雇用後にクライアントに派遣する)で、2023年度は男性215名、女性291名が入社しました。従業員に対して、当社が直接ビジネスマナーなどの基本的な教育を行っています。

また、ロジカルシンキングなどの基礎研修、フォローアクション能力を身につける研修、チームワークに関する研修、その他ユニークなところでは、質問力を高める研修や、接客業が大半のため、仕事に大切なスキルの“笑顔”を学ぶ研修なども実施しています。

――充実した研修ですね! 新入社員の心構えとして、業務へのモチベーションを引き出したいという目的があるのでしょうか?

石田:新入社員に対しての話ではないのですが、せっかくよいお題をいただいたので、「モチベーション」についてお話しさせてください。
僕は、仕事現場で「モチベーション」という言葉が出てきた場合、危機感を感じると思います。

――そうなのですか? モチベーションがあれば、何事に対してもポジティブに取り組むことができますし、高まれば業務で好成績が見込める気がするのですが……。

石田:仕事にやる気やモチベーションの話が入ってくると、「やる気がなかったから未達成でした」という言い訳が成り立ってしまう。すると、「上司は部下のやる気・モチベーションを上げていかなければならない存在」とか、「部下にやる気を持たせるマネジメントをしなければいけない」という理論も成立してしまう。

そうじゃないと思うんです。

上司・部下の互いの不安定な感情に左右されずに、いつも同じペースで仕事をしなければならないはずです。

――確かに、モチベーションややる気は「感情」ですね。

石田:感情や気分に任せて仕事をすると、浮き沈みがあるたびに仕事への向き合い方が異なり、能力を発揮しづらくなる。周囲もまた、気分次第でコロコロ言動を変える人間を信用しなくなってしまいます。

そもそも部下は誰からの評価を獲得しなければいけないかというと、上司や会社ではないでしょうか。
上司・会社に対して、求められる目標を達成しなければいけない存在です。

ですから、モチベーションがある・ないという次元の話ではないのです。

モチベーションがあろうがなかろうが、上司や会社からの評価を獲得しなければいけないという事実は、何一つ変わらないので。
ちなみに、僕(組織のトップ)が評価を獲得しなければならない相手は、市場となります。

どうしたらモチベーションは上がるのか?

――なるほど……。では、Evandで「やる気を高めましょう!」という話は一切出てこないと。

石田:はい、出てきません。そういう言葉が会議中に出てくる会社を知っていますが、上司が悪い錯覚を起こしてしまうでしょう。
上司が考えることは、こんな感じです。

「部下の〇〇さんはモチベーションが低下しているようだから、いっちょ飲みにでも誘って励ましてあげよう」

そして居酒屋で繰り広げられるのは、「いろいろあるけど頑張ろうぜ!」という励ましの会でしょう。

でも、モチベーションが下がった人を、精神論で励ましてもムダだと思いませんか。
本人の小さな成功体験、つまり少しでも成長したと実感することでしか、仕事でモチベーションを上げることはできないと思うのです。

ちなみに当社の会議は、個々人がモチベーションを上げる場では当然ありません。あくまで「約束をする場」です。

「目標に対して不足していること・目標値・それを完遂するための改善行動」がわかる内容を提示し、「完遂します」と約束する。シンプルに、それだけです。

約束したことをきちんと行うために、やる気やモチベーションという“保険”をかける必要はないと思っています。

『スタートアップ芸人』には、モチベーションに頼らなくても上司と部下の関係がうまくいく仕組みづくりのノウハウが盛りだくさんです。部下のやる気やモチベーションを上げないといけないと思っている方々に参考になると思います。