自分で発注してみて発見したこと

 しかし、私はひるみませんでした。

「まずくなったパンをどうして売らなくちゃいけないんですか。だったら残らないように発注すればいいじゃないですか!」

 すると、予想外の言葉が返ってきました。

「じゃあ、自分で発注してみる?」

 発注は責任ある仕事です。
「パートがそんな責任のある仕事をしていいの?」という気持ちはありましたが、喜んで引き受け、家に仕事を持ち帰って発注数を考えました。
 もちろん、家で仕事をしても、一銭にもなりません。

 最初はまったくうまくいきませんでした。

 毎日、売れたパンの種類と数をメモし、発注数との差を確認し、次の発注数を決めるのですが、売れ行きがよかった商品が急に売れなくなったり、売れ残ったから数を減らすと突然売れ始めたりと、けっこう難しいのです。

 試行錯誤しているうちに、

「データだけで判断しないで、自分が自信を持っておすすめできる商品を多めに発注したほうがいい」

 と気がつきました。

 おすすめしやすい商品なら、少し多めに仕入れても、自分でなんとか売り切ることができると思ったからです。
 その結果、売れ残って廃棄処分する商品は減っていき、売上は1日当たり5万円も伸びました。