デジタル貧国の巨人 NTT#2写真:西村尚己/アフロ

NTTグループの改革をリードしてきた澤田純会長が代表権を返上して一線を退いた。これにより名実共にグループ社員33万人のトップに島田明社長が立つ中で、稼ぎ頭のNTTドコモの社長人事で番狂わせが発生した。特集『デジタル貧国の巨人 NTT』の#2では、経営トップ人事で進む「年功序列の崩壊」とともに、次期社長レースで有力視される候補3人の実名を公開する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

“電電公社”世代が一斉退任!
「官僚より官僚的」な役員人事にメス

 ついに経営陣の年功序列も崩壊へ――。

 NTTグループは島田明社長の下で、入社年次やキャリアで出世・待遇が決まる人事体系にメスを入れている。2021年には全管理職に職務の内容で社員の処遇を決める「ジョブ型」人事を導入し、23年には一般社員にも、専門性を磨きやすい人事制度を導入した。

 これにより「官僚より官僚的」とされたNTTグループの硬直的な人事の序列が急速に崩れてきているが、24年6月の株主総会では、この大波がついに経営トップの役員人事にまで及んだ。

 最大の変化といえるのが、旧世代の一掃だ。NTTグループ主要各社の株主総会で、日本電信電話公社(電電公社)時代に入社した役員が一斉に退任。これにより、電電公社時代を経験した役員は、NTT持ち株会社の澤田純会長と島田社長の2人を残すのみとなった。

 電電公社が民営化され、NTTになったのは1985年。澤田会長は代表権を返上したため、事実上、経営執行メンバーで公社時代を知るのは島田社長ただ1人になった。

 いよいよ本格的に「民営化世代」が経営の中枢で活躍する時代が到来する中で、表面化したのが、NTTドコモの社長人事の番狂わせだ。

 これまでのグループの序列で「大本命」とされていたエリート候補を覆して、中途採用の前田義晃氏(54歳)がドコモ新社長に就任。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTデータグループの社長も一気に若返り、グループ経営陣の年功序列のバランスが崩れ始めている。

 次ページでは、この6月の株主総会で顕在化した経営陣の年功序列の崩壊の実情を俯瞰しつつ、NTTの次期社長レースで有力視される3候補の実名を公開する。