近年、日本には不動産バブルが到来している。加えてマイナス金利の解除も決定し、「家を買おうと思っていたけど、今はタイミングじゃないのでは?」と不安に感じている人も多いのではないだろうか。
そんな住宅購入を不安に感じる人の悩みを解決するために『住宅購入の思考法』が発刊された。本記事では、著者の江口亮介氏のインタビューをお届けする。
家に資産性って必要?
――素人質問かもしれないのですが、住宅購入になぜ「資産性」が必要なのでしょうか。家を買うなら、「居住性」だけでいいように思うのですが。
江口亮介(以下、江口):まず、「資産性」が必ず必要というわけでは当然ありません。居住性を重視して家を買うのも間違いなく正解です。
むしろ、資産性だけを追い求めて家を買うことのほうがストレスは大きいのではないかと私は思います。
とはいえ、資産性が重視されるようになった理由は、「家=資産の一部」という考え方が一般的になってきたことが関係しています。
――家は資産の一部ですか。どうしてそのような考え方が広まっているのでしょうか。
江口:家が一生で1回の買い物ではなくなっているからです。かつては住宅ローンが高金利だったこともあり、戸建てを買ってそこに一生住むというのが当たり前でした。
しかし、現代では住宅ローンは銀行間の競争によって低金利が実現し、ライフスタイルに合わせて住み替えができる時代になっています。
その住み替えの際に、現在の家がそれなりの金額で売れれば、新たな持ち出し金額はなし、場合によってはお金にプラスが生まれるというわけです。そのため、資産性が重視されるようになってきました。
――なるほど。ただ、住み替えはそんなに必要なのでしょうか。
江口:皆が住み替えをする必要ありませんが、こう考えたらどうでしょうか。
たとえば夫婦+子ども2人の4人家族で戸建てに暮らしていたとします。育ち盛りの子どもがいる家庭としては理想的です。
ただ、子ども2人が自立して、家を出ました。家に残されたのは夫婦2人です。家の広さを考えると急激に持て余してしまうのではないでしょうか。
ここで言いたいのは「家を売れ!」ということではなく、もし「売る」という選択肢を持てていたら生活はもっと楽になるかもしれないということです。たとえば、戸建てを売却して、駅前のマンションに住み替えたらどうでしょう。
2人分の広さにすれば十分可能です。買い物もしやすく、移動も楽になります。年老いてくると駅までの買い物も大変になりますが、駅前に住めばその点も解消されます。
家は幸せになるためのツールでしかありません。「本当はやりたいことがあるけど家があるから」「本当は便利な暮らしがしたいけど家があるから」となっては一体なんのための家なのでしょうか。
そうではなく、皆さんのライフプランに合わせて家を選んでいくことが大事なのです。しかも、資産性と聞くと「数年で住み替え」をイメージされるかと思いますが、基本的には10年以上住んだうえでの住み替えが一般的です。数年での住み替えは諸費用分などで結局マイナスになってしまうことが多いですからあまり得策ではありません。