そんな筋合いないのに。初対面なのに。空気が入りきっていないシワシワのバブルボールを被って、ゲートが開くまで待っているのは辛かったです。

 そこからはスローモーションで覚えています。青いゲートがバッと開き、赤茶色の牛がこちらに一直線に向かってきます。バブルボールを握りなおしました。

 とてつもない衝撃でした。隕石にぶつかったような気分です。体が吹っ飛び、上下がわからなくなって、宙に浮きました。バイバイキーンと言っていたかもしれません。

 歯と膝をガタガタ言わせながら僕は根性で立ち上がりました。体に違和感がありました。ぶつかった衝撃で自分の肘を脇腹に当ててしまい肋骨がとてつもなく痛かったのです。絶対ヤバいと思ったので、その日、アメリカの病院に行かせてもらいました。診察を待つ人でパンパンの待ち合い室で4時間待ってレントゲンを撮りました。

「まったく問題ないわ。」

 看護師さんの口から出た診断結果に付き添いのスタッフさんと僕は驚きました。それは、世界まる見えの外国の吹き替えの感じで聞こえました。

 その足で残りのロケに向かいました。柵で囲まれた広場の真ん中にあるシーソーに乗って、そこに放たれた猛牛の突進をタイミングよく避けるというものでした。

自分のお笑いはこれだ!!

 身体を張って挑むロケがとても多い。特にサバイバルのロケでは、本当に身の危険を感じるときが何度もあります。

 本当に怖くて危険だったもののひとつが、ツムギアリであります。その名の通り、葉と葉を紡いで巣を作るアリです。そのアゴはとても強靱でものすごい攻撃力を持っています。しかも動きが素早く、隣同士で生えている木と木が、枝1本でも触れ合っていると、その枝をつたって反対側に行き勢力を拡大してきます。とにかく渡ってきます。

 お笑い芸人の僕にとって、蟻だけに、リアリーデンジャラスでありながらリアリービッグチャンスでもありました。そこらじゅうに、ソフトボールぐらいの大きさの巣が僕の目線の高さの木にたくさんついています。僕は危険だから早く通り過ぎようと提案します。