あばれる君が芸人として覚醒した超過酷ロケ「人は猛牛と闘わなければならないときがある」あばれる君が「自分の笑いはこれだ!!」と確信した超過酷なロケとは?  写真:ポプラ社提供

自分自身の天職を見つけたいというのは多くのビジネスパーソンの願いです。それは芸人にとっても同じ。どんな芸風が自分に合っているのか、ネタ・トーク・ロケ……どんな仕事に取り組めば自分が輝けるのか、悩むことが多いと言います。あばれる君が自分のお笑いに確信をもったのは厳しい海外ロケの最中だったそうです。先日出版された、初エッセイ『自分は、家族なしでは生きていけません。』の中から、駆け出しのアマチュア芸人時代や厳しいロケの裏側などを抜粋して紹介します。

お笑い修行の1年

 僕がお笑いの修行をはじめた場所の話をしましょう。

 きっかけは相方募集掲示板の「団員募集」の文字。指定された最寄り駅に着くと改札に迎えにきてくれたのは、メガネをかけた、前髪が薄く、顔が赤黒い痩せた男の人でした。Uさんとします。

「最近来る人、すぐやめて根性ないけど君は大丈夫っすか? 劇場あるんで先輩に挨拶に行きましょう。」

 Uさんの声色を聞いて顔を見たら、「疲れているし食も偏っていますし不規則な生活してますしタバコ吸いますし寝不足ですしめちゃくちゃ貧乏です」と書いてありました。スタスタ歩くUさんに連れられて辿り着いたのは、舞台付きの居酒屋。とうとう僕は、芸人人生の一歩を踏み出したのです。

 メンバーは団長を中心に5人ぐらいで、その中で新しい人が出たり入ったりという感じでした。そこでは本当に辛かった思い出のほうが断然多いですが、そこそこ楽しかったです。

 お客さんがはけてから深夜、お笑いの特訓がはじまります。中でも忘れられない特訓が「顔面洗濯バサミ」です。ヒモがついた洗濯バサミを顔にいくつもつけます。ヒモが引っ張られて洗濯バサミが顔からとれたときに、おもしろいリアクションをするというものです。深夜から明け方にかけて何度も繰り返しリアクションの練習をします。ソレを団長が見てあれこれ言うのです。最悪です。