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「人間の器」を大きく育てるには、キャリアの地盤を広げて高みを目指すと同時に、人生の“谷(マイナス)”を経験して人間としての深みを増すことが重要だ。「ホリエモン」と「キンコン西野」の事例を通じて、個人の希少性と信用を高める秘訣に迫る。本稿は、藤原和博『どう生きる?――人生戦略としての「場所取り」の教科書』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。

人間の器の大きさや魅力は
「マイナス」な面があってこそ

「人間の器」と言うと、多くの人は茶碗や壺など焼き物の器をイメージするようです。

 しかし、それではどこをどう大きくすればいいか、よくわかりません。はたして厚みなのか、深さなのか……。しかも、厚くすれば焼く時に割れてしまいますし、深くしすぎると器として使いにくい……。

図1:「キャリアの大三角形」の作り方同書より 拡大画像表示

 私が「人間の器」として提示するのは、図1で示した「キャリアの大三角形」の完成形(三角錐)を上下につなげたダイヤモンドのような立体です(図2)。

図2:人間の器同書より 拡大画像表示

 前提として、「キャリアの大三角形」とは、以下のようなものです。

「1歩目」で足場を作り、「2歩目」で底辺を作り、「3歩目」で三角形にする。そして3歩目は大きくジャンプして、三角形の面積を広げる。なぜなら、面積の大きさこそが希少性の大きさであり、希少性を高められれば、人材としての必要度が高まるから。

 しかし人間の器を考える時、これで終わりではありません。

「キャリアの大三角形」を立体化、3D化していくのです。具体的には、底面となっている三角形の中心から「高さ」を伸ばし、三角錐を作ります。

 底面の三角形の大きさは希少性の大きさですが、三角錐の体積は「信用」を表します。クレジット、つまり他者から与えられた信任の総量です。

 この信任の総量の一部を切り取ったもの、クレジットを現金化した部分が報酬です。たとえば、1億円分の信任の総量がある人の場合、報酬が3000万円だったら、7000万円分の信用が余ります。これが、人生の自由度(余裕)です。

 図2の、上の三角錐は「キャリアの大三角形」を3D化したものですが、下の三角錐は、人生の「谷(マイナス)」を蓄積した経験量です。

 大きな谷であればあるほど、それは深くなり、全体の体積を大きくする。人間としての深みを増すわけです。人間的な魅力に溢れている人は上が高いだけでなく、下も深い。

 まさに人間の器が大きいのです。

「キャリアの大三角形」の面積を大きくするだけでは、信用は大きくなりません。立体化した三角錐を大きくすることが信用を大きくし、人生のポテンシャルをより大きなものにしてくれるのです。