増税は過剰代表、社会福祉は過少代表に
一票の格差による「民意の負託の歪み」

 それでは第一に、定数不均衡により選挙に際して有権者から負託される民意、具体的には有権者に提示された選挙公約について、どのような分野の政策が過剰に代表され、またどのような分野の政策が過少に代表されているのかをみてみよう。

 まず、2005年及び2009年の衆議院議員選挙の小選挙区で当選した全ての候補者が選挙公報において有権者に提示した選挙公約を収集。それらを16の政策領域(社会福祉、保健衛生、生活保護、教育労働、防衛、外交貿易、農林水産、商工鉱業、運輸通信、地方自治、住宅中小、国土環境、一般行政、司法警察、国債、その他)における予算の増減、ならびに6つの特別な争点(年金、増税、格差問題、後期高齢者医療制度、憲法改正、郵政事業)毎に内容分析し、各選挙における選挙区選挙で選出された国会議員がどのような民意を負託されているのかを調べた。そして、各当選者の選挙公約に当該選挙区の定数不均衡値を掛け合わせて定数不均衡がない場合の国会を想定し、どのような民意が負託されているのかの期待値を仮想的に算出した。その上で、両者を比較することで、負託される民意に対して定数不均衡がもたらす歪みを求めた。

 その結果、2005年衆院選小選挙区で当選した国会議員は、運輸・通信、農林水産、一般行政などの予算増額及び増税と郵政民営化について過剰代表されている一方、社会福祉や司法・警察、商工鉱業、などの予算増額については過少代表されていることが明らかになった。

防衛に関する言及は過剰代表に
一票の格差による「国会の歪み」

 次に、2005年及び2009年の衆議院議員選挙で当選した全ての国会議員が、その後の国会でどのような発言をしているのかを調べるために衆議院の本会議及び全ての委員会の議事録を収集して、前述の16項目の政策領域別に内容分析した。また、そうした国会議員が議会に提出された法律案に対してどのような投票を行ったのかについてもデータを収集した。

 具体的には、2005年衆院選小選挙区当選者については、2005年9月21日に招集された第163回(特別会)から2009年 7月21日に閉会した第171回(常会)までの衆議院本会議及び全ての委員会における全ての発言を収集して、選挙公約と同様に内容分析した。また、2009年年衆院選小選挙区当選者については、2009年9月16日に招集された第172回(特別会)から2011年12月9日に閉会した第179回(臨時会)までについて同様の内容分析を行った。