1月21、22の両日、日銀は今年最初の金融政策決定会合を開催する。これは安倍政権が発足してから最初の会合であり、新政権とどのように向き合い、政策の枠組みについてどのような答えを出すか、といった点で世間の大きな注目を集めている。
1974年東京大学経済学部卒業、日本銀行入行、80年シカゴ大学留学、83年同大学でPh.D取得・日本銀行復帰(金融研究所)、92年調査統計局企画調査課長、94年金融研究所研究第一課長、97年企画局参事、98年金融研究所長、06年日本銀行退職、中央大学教授、09年京都大学・公共政策大学院・教授、現在に至る。『ポスト・バブルの金融政策』(共著、ダイヤモンド社)『バブルと金融政策』(共著、日本経済新聞社)『ポスト・マネタリズムの金融政策』(日本経済新聞出版社)、『金融政策のフロンティア』(日本評論社)など著書多数。
安倍政権の経済政策は次第に輪郭が見えはじめているが、全体像はまだわからない。積極財政志向だが、当初強調していた日銀の国債購入を前提とした財政支出拡大(マネタイゼーション)の主張はトーンダウンさせた。だが、財政規律との折り合いのつけ方は、この原稿を書いている時点では不透明なままだ。
しかし、金融政策について円安誘導とインフレ目標設定を求めていることははっきりしている。そこで、以下ではこの二つについて論じたうえで、それらを踏まえて今後の日銀と政府との関係について考えてみたい。
インフレ目標政策は採用すべきか
インフレ目標については、筆者は重要な対立点とは考えていない。
現時点で主要中央銀行は、表現の違いこそあれ、実態としてはインフレ目標型の枠組みのもとで金融政策運営を行っている。日銀が現在採用している「物価安定の目途」も教科書的には「柔軟なインフレ目標政策」に属している。
むろん、「時期を区切って特定のインフレ率を厳格に追求する」というインフレ率至上主義の枠組みは明らかにまずい。変動相場制以降以降の時期に、仮に2%程度のインフレ目標達成を厳格に目指していたら、石油ショック時にはより強烈な金融引き締めで実体経済を痛めつけ、デフレ的な物価情勢にあったバブル生成期には、より強力な金融緩和でさらにバブルを助長していたはずだ。こうした硬直的な枠組みでなければ、2%を目指すという姿勢をより明確化することで政府と協調できないとは思えないし、後述の理由から、むしろ積極的に協調すべきだと考える。