自民党政権は倒れたが、政権の撒いた種はしっかりと実を結びそうだ。
前政権が撒いた種というのは、農商工等支援事業(農商工等連携促進法)。2008年、当時の福田康夫首相の下、二階俊博経済産業大臣が旗振り役を努め、地域経済の活性化と食料自給率の向上を目的に、与野党全会一致で決定された施策である。
その第1号として認定されたものの中に「カラハリスイカ」なるものがある。スイカの開発でタッグを組むのは、植物ハイテック研究所(奈良先端科学技術大学院大学の学内発ベンチャー企業。以下、植物ハイテック)、奈良県農業共同組合(以下、JA奈良)、そして田村薬品工業(大阪市。以下、田村薬品)だ。
ボツワナで「砂漠の水がめ」と
呼ばれたカラハリスイカの正体
カラハリスイカとは、いったい何なのか。実はこのスイカ、「腐らないスイカ」なのだという。カラハリスイカは、世界中のスイカの祖先、いわゆる原種にあたる。
その名のとおり、アフリカ南部のボツワナ共和国・カラハリ砂漠に自生する。カラハリ砂漠に住む砂漠の民・サン族は、このスイカを「砂漠の水がめ」と呼び、果汁を飲料や入浴に使用しているとのこと。
水が少なく、日差しの強い砂漠にもかかわらず、豊富な水分を貯えて自生するカラハリスイカだが、そのメカニズムは長く謎に包まれていたという。
そして、このメカニズムを解明したのが、奈良先端科学技術大学(以下、奈良先端大)だ。同大学の熱意に端を発し、カラハリスイカが「地方産業のお手本」と目されるようになるまでの経緯を、振り返ってみよう。
奈良先端大では、もともと地球温暖化対策の基礎研究をしていた一環で、砂漠の緑化に役立つ乾燥に強い植物を探していた。
そもそも氷河期以降の植物は、乾燥に弱い。そこで氷河期を経験していない地域の植物を探したところ、南半球の南回帰線付近およびその南の地域は氷河期を経験していないことがわかった。そして、ボツワナのカラハリスイカと出会ったのである。
植物は乾燥した環境で強い光が当たると、体内の水分の蒸発を防ごうと気孔を閉じてしまい、CO2を取り込みにくくなる。すると、光エネルギーが過剰となり、体内に活性酸素が発生、それが葉緑体機能を低下させ、結果的に植物は枯死してしまうのだという。