自民党内で表面化した権力闘争の内実、首相は戦後80年の節目に「石破談話」発表を模索7月25日夜、首相官邸前で「石破辞めるな」などと書かれた紙を掲げ、デモを行う人たち Photo:JIJI

 参院選での与党大敗から政治が大きく揺れ動く。自民党内で表面化した首相、石破茂の退陣を求める「石破降ろし」は党内抗争に向かいつつある。きっかけの一つは反石破の急先鋒として知られる前幹事長、茂木敏充が自らのユーチューブ番組で石破の退陣要求を表明したことだ。

「リーダーを含めて主要なメンバーを決め、やり通していく姿が党再生のために必要だ」

 選挙後に党の中堅若手がいち早く石破責任論を唱えていたが、その顔触れには茂木の影響下にある議員が多くいる。茂木の出身地である栃木や隣県の茨城、群馬など北関東選出議員が先頭に立つ。「北関東連合」(主流派幹部)と言ってもいい。退陣要求の根拠は石破が「必達目標」に掲げた「自公で50議席」に届かず47議席に終わったこと。さらに、昨年の衆院選、6月の東京都議選を加えると主要選挙3連敗。茂木は「スリーアウトチェンジ」と語った。

 対して石破の政権継続への意思は極めて固い。それを支えるのが米大統領のトランプが提起した関税措置を巡る日米協議の合意。石破は交渉のためワシントン入りしていた経済再生担当相の赤澤亮正から「合意間近」の連絡を受けていた節がある。参院選の開票作業が続く中、石破がテレビの選挙特番で「比較第1党」を理由に続投宣言したのも合意を見越してのものだった。

 選挙から3日後の7月23日午前(米東部時間22日午後)、トランプが日米交渉の合意をSNSに投稿。石破は前日の22日、赤澤から最終案の報告を受け、その内容を自民党幹事長の森山裕に伝えた。米国からのコメの輸入枠拡大など農業分野も合意内容に含まれており、「農政のドン」でもある森山の了承を取り付ける必要があった。