
根回しの方法や、稟議の通りやすいプレゼンの仕方、キーマンの把握……そういうのは得意だけど、「仕事ができるか」と問われればそうは思えないーー。そんな人に心当たりはありませんか? ミドル層、主に氷河期世代が今後転職するにせよ、今の会社に居続けるにせよ、本当の意味で「できる人」になるにはどうすればいいのか。一方で、それほど意識を高く持てない人は何をしたらいいのか。人事、採用、マネジメントをはじめ、人間関係の困りごとを解決する連載第12回は「ミドル世代の生き残り戦略」を取り上げる。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)
なぜあの人が「仕事ができる」と
見なされているのかわからない
みなさんの職場にこんな人はいませんか。その会社では「できる人」として評価されており、社内では「あの人に任せておけば大丈夫」と頼られているけれど、一般的な意味で仕事ができるとは言い難いし、単に社内での立ち回りがうまいだけのように見える。あんな人がなぜ「仕事ができる」ということになっていて、出世しているのかわからない――。
実は彼らに共通しているのは、「企業内特殊スキル」に特化して能力を培ってきたという点です。スキルには、大きく分けてこうした「企業内特殊スキル」と「ポータブルスキル」の2つがあります。
企業内特殊スキルとは、その会社でしか通用しない特殊な技能のことを指します。具体的には、会社の人間関係の把握、根回しの方法、稟議の通りやすいプレゼンの仕方、キーマンの把握といったものです。
これらのスキルは確かに価値があり、実は企業内特殊スキルが高いからこそ昇進しているということは珍しいことではありませんし、一概に悪いこととも言えません。仕事はチームで行うものですから、社内でチームワークを活かして仕事をするためには、こうした能力は少なからず必要になるからです。
しかし、問題はこのスキルにしがみついてしまうこと。特に、今のミドル世代の多くを占める35歳から50代半ばの世代、つまり就職氷河期世代がこの傾向に陥りがちで、ここに大きな落とし穴があるのです。