日本が30年間1位を続ける
製品複雑性ランキング

――事実を積み重ねて、通説を覆しています。

 日本がグローバルな技術リーダーであることを示すデータの1つが、図1「世界の経済複雑性ランキング」です。

 ハーバー大学のグロースラブが調査したAtlas of Economic Prosperityを基に作成したランキングで、2つの指標に基づいています。1つ目は、その国の輸出品の多様性と複雑性です。2つ目は、その製品の偏在性です。その製品が作れる国が少ないほど高い評価となります。

 例えばTシャツは作り方が簡単で、多くの国で生産しているので、それを輸出する国のスコアは低くなります。一方、半導体に必要な特殊素材などは生産が難しく、その輸出国のスコアは高くなります。このように輸出品を集積し分析したランキングで、日本は過去30年間にわたって世界1位です。

 この図では、2位のスイスと3位のドイツは省略しています。日本との関係がより深い韓国や中国、アジアの国々との比較を見やすくするためです。韓国4位、中国17位、ベトナム52 位と、この期間中にそれぞれ急上昇しています。

――日本が1位を続けていることの意義は何ですか。

 日本企業でしか作れない製品、他国の企業より生産性高く生産できる製品が多く、日本企業の代替が効きにくいということです。

 背景には、日本の大企業が高度で専門的な組織能力を幅広く保有していることがあります。そして、30年という長期間において、これらの企業の製品は完全に変わりました。これらの企業はかつて最終製品を作っていましたが、今では中間財(部品や素材)を作っています。日本の大手企業は、最終製品メーカーから高度な部材メーカーに転換しました。それが「技のデパート」戦略です。