圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのはFIDIAグループのEvand株式会社の今井雄基部長。年間1万人の新卒・中途採用面接を行う人材のプロから、「定着率を上げる為導入している評価制度」について話を聞いた。(構成・石井仁朗/ダイヤモンド社書籍編集局)

【人事のプロが教える】自ら動く社員を育てる自立の仕組みPhoto: Adobe Stock

なぜ「随時」昇進なのか?

――Evandは社員定着率が「95%」と聞いています。
なぜ、そんな高い数字が維持できているのか、教えてください。

今井雄基(以下、今井):1つは、随時昇進制度です。
僕らの会社の特徴として、昇進が「随時」なんです。
ですから、「毎月」「誰にでも」チャンスがある。

もちろん、入社年数や経歴なども関係ありません。
実際に入社1年後に、SV(スーパーバイザー)職へ昇進した人や、24歳で拠点長に抜擢された人もいます。

――なるほど。評価はやはり業績や実績ですか?

今井:いいえ、それだけではありません。
僕らは企業理念として“「人」が輝く、「世界」が変わる”を掲げています。

人が輝く状態について、社員が「自己成長」「理想の自分」を目指して行動している状態=輝いていると定義しています。
輝く人は、自分自身で周囲を巻き込み、世界を変えられるという理念です。

つまり社員の評価基準は、上記の“輝いている”状態の人。
圧倒的な成果を出している人はもちろん、それ以外の人間的成長にもフォーカスしています。

シンプルに言うと、「できなかったこと」が「できる」ようになった状態=WILL CAN MUSTな状態の人です。

いつかやろうではなく「今」やろう

――もう少し詳細に教えていただけますか?

今井:WILL=やりたいこと、CAN=やっている、できている、MUST=今やるべきこともやっている。
もう少し細かくはありますが、やりたいことは誰でもあると思います。
実際にそれをやっているかどうか? というのは別の話。

「いつかやろう」ではなく「今やろう」がテーマです。
これは『スタートアップ芸人』著者である森社長からの言葉。

以前、森社長から、「お金もらえたらやります」とか、「役職もらえたらやります」という人は結果的にやらない人がほとんど。

本当にやる人はもうやっているよと。
課長のときに、部長の仕事をするから部長になるんだよと。
「それ、いいな」と思い、社員の評価制度に落とし込んでいるんです。

「自立の仕組み」のつくり方

――なるほど。確かに、理想だけ語って実際にまったく動いていない人もたくさんいますよね。

今井:はい、多くの人は、80点や90点と高得点を目指している人が多い。
ただ、人事としては、全員の平均点が90点で「私、93点です」と言われても、それが大きな評価に値するとは考えられない。

対照的に、みんなが0点のテストで10点取るのはかなりすごいこと。
なので、「“今やっている人”に100点満点はいらない、10点でいい」と思っているんです。
なぜなら、他の人はみんなやっていないので価値が高いわけです。

この10点で走れる人、つまり0→1をつくれる人をどんどん称賛していくことが、結果的に我々の事業が伸びると思っています。

また、この10点を見逃さないために、先ほど触れた、制度(仕組み)に落とし込んでいるのです。
これを僕らの中では“自立の仕組み”と呼んでいます。

たとえば、料理人でたとえると、ほとんどの場合、皿洗いからスタート。
ただ皿洗いをしても、給料は上がりません。

先輩に「魚をさばいてみて」と言われてやりました。
これも、別に給料は上がりません。

ただし、皿洗いだったけれど自分で練習して、魚がさばけるようになった場合は、一定の評価があれば給料が上がることはよくありますね。

“自発的に動けるかどうか”で評価は変わる。
だから「行動しよう」と社員には常々伝えるようにしています。

『スタートアップ芸人』には、一人ひとりの社員が自ら動く「自立の仕組み」づくりが詳細に書かれているので、とても参考になると思います。