圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、森氏と強い信頼で結ばれている幼稚園時代からの旧友であり、本書では「マネジメント能力に圧倒された」と語られるマーケッターである、FIDIA役員の西俊彦氏。FIDIA(当時の社名はSuprieve Holdings)への入社以来、初動3年間で32億円以上の売上を達成した人物だ。その業績は、2018年amazon年間カテゴリーランキング1位獲得をはじめ、2019年楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー獲得、2021年楽天ショップオブ・ザ・エリア、amazon売れ筋15ブランド獲得など数多い。そんな西氏から、仕事の転換期に大切な心構えを伺った(ダイヤモンド社書籍編集局)。

壁にぶつかった時、「潔く撤退できる人とできない人」のほんのわずかな圧倒的な違いとは?Photo: Adobe Stock

自分が納得して仕事できるかどうか

――西さんがFIDIAに入社した当初の仕事内容を教えてください。

西俊彦(以下、西):僕は、FIDIAにはEC事業部(現・イルミルド株式会社)の立ち上げから入社しました。
最初の業務は、総勢4人での古本事業でした。

まず、タウンページに掲載されている廃品回収業者に片っ端から電話をかけるんです。
「新聞紙や古紙に混じって回収された古本を譲ってください」とお願いし、OKをもらえたら、ワゴン車に乗って取りに行く。
そうすると大概、「勝手に探して持っていって」と言われるので、自分たちで手作業で探すんです。
マンガがあったら嬉しいのですが、なかには1時間引っかき回して何もないこともあり、宝探しみたいな感じです。
そうやって見つかった本をきれいにし、Amazonやネットショップで売っていました。

――それはビジネスとして稼げたのですか?

西:今思えば新しくもないし、合理的でもないですよね。
自分でも「何やってたんやろ」と思います。
でも、そのときは、それが自分たちの最善の方法だったんです。
当時の僕らは視座も低く、経験値もない。見える世界がすごく狭かった。
とにかく、これと決めたことを信じてフルパワーでやり切ろうとしていた。
事業計画上のよし悪しではなく、自分たちが感情的に納得して仕事できるかどうかが大事でした。

予想外の問題発生! その対応は……

西:ただ、仕事をしていくうちに予想外の問題が出てきて、感情が追いつかなくなっていったんです。
というのも、古本なのでダニが多い。その本を大量にオフィスに運び込んでいたので、オフィスがダニまみれになってしまったんです。
売上は徐々に増えていったのですが、それ以上にスタッフの体の湿疹が問題でした。
そのうちに自分たちだけでなく、他の事業部の人たちにもダニで迷惑をかけるようになってしまったんです。

――ダニが大量発生! どう対処したのですか?

西:試行錯誤して半年くらいは続けましたが、とうとう他の事業部の人たちから、「ダニ事業部」と呼ばれるようにまでなってしまった。

それに体の湿疹は止まらず、売上も徐々に上がってこなくなった。
売上と人件費がかろうじてトントンくらいだったんです。
それで、「古本事業はもうやめさせて」と森に頼み、EC事業部の最初の事業は終了となりました。

潔く方向転換できた理由

――半年でピボットを回すことに、ためらいなどはなかったのでしょうか?

西:ありません。自分たちは何も中途半端にしなかったことだけは自負しているので。
古紙回収業者への電話にしても、大阪・奈良・三重・京都の全業者に電話し尽くし、結果がわかるまで全力でやったんです。
PDCA(Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善))もすごく回していました。

僕らのPDCAはプラン・ダニ・チェック・アクションだな、なんて冗談をよく言っていたくらいです(笑)。

そうやって、マーケットのポテンシャルが狭かろうが低かろうが関係なく、自分たちにやれることをやりきった
その思いと自信があるからこそ、潔く事業転換ができたんです。

それがすごくよかったと思っているし、今に続く学びになったと思っています。

なので、今回のお題である「仕事を変えて後悔しないために必要なこと」は「全力でやりきること」だと思います。