データを発表する女性写真はイメージです Photo:PIXTA

上司や同僚を説得し、自身の意見を通すためには根拠が必要になる。その根拠のひとつとなるのが「過去の数字」だ。しかし、若手ビジネスパーソン(特に社会人1年目)のなかには、数字に対する苦手意識が強く、うまく活用できずに損をしている人も多いはず。ビジネスで使える数学の第一人者・深沢真太郎氏が、数字を味方につけるテクニックを伝授する。※本稿は、深沢真太郎『入社1年目から、仕事の数字に強くなる本 説得力と信頼感が格段にアップ!』(三笠書房)の一部を抜粋・編集したものです。

自分の意見とその根拠は
「平均値」と「率」で作ることが出来る

 意見を伝えるときには根拠が必要となる場面もあるでしょう。その根拠をつくるためには当然、「過去の数字」を使うことになります。

 たとえば、未来の売上を予測したいときに、過去の売上実績を使って予測することなどが典型的な例でしょう。そんなとき、まずあなたの武器になってくれる手法は「平均値」と「率」の2つです。

 世の中にはもっと高度な分析手法がたくさんあり、それが武器になることもあります。しかし、慌てる必要はありません。まずは基本的なテクニックを使えるようになりましょう。

 たとえば、4月から発売した新製品について7月の販売数を予測し、意見を伝えなければならない状況を考えてみます。

図表:7月の販売数を予測する同書より転載 拡大画像表示

 過去の数字は4月、5月、6月の3つしかありません。これだけで7月の数字を予測するとしたら、もっともシンプルな発想は3つの平均値を予測値として説明することかもしれません。

7月の販売数(予測)=(4~6月の平均販売数)≒501(個)

 しかし、数字を見るとわかるように、過去3カ月間は明らかな減少傾向です。しかも、前月比はいずれも90%強。この傾向が続くと仮定すれば、6月の実績(461個)の90%にあたる415個という予測の数字もつくれます。

7月の販売数(予測)=461(6月の販売数)×0.9≒415(個)

 今回のケースのように、まだ販売をスタートさせたばかりで今後どう変動していくかつかみにくい場合は、この2つの数字の平均値を予測値として説明すればよいでしょう。

7月の販売数(予測)=(501+415)÷2≒458(個)

 ここで使った手法は「平均値」と「率」の2つだけです。

根拠で数字を使う判断基準は
「納得感を与えられるか?」にある

 この数字を使い、実際は「サンドイッチ形式」で伝えると良いでしょう。サンドイッチ形式とは数字を情報でサンドイッチする伝達方法であり、構造的には「情報→数字→情報」の順で伝えることです。数的根拠のある伝え方をしています。

(1)情報:7月の販売数は前月と同等、あるいは少し減少すると予測しています。

(2)数字:ネガティブシナリオなら400個、ポジティブシナリオでは500個。具体的な予測値は458個としています。この数字は過去3カ月の平均値、ならびに前月比の傾向から算出した2つの予測値の平均値です。

(3)情報:ただし、まだ過去のデータが少ないので、誤差が大きく出ることも想定しておくべきだと思います。