Bコープ認証基準は、より包摂的・公平に改善されていくPhoto by Aiko Suzuki

インクルーシブ(包摂的)かつ公平で、リジェネラティブ(再生型)経済システムへの変革を目指すムーブメント「B Corporation(B Corp、Bコープ)」。一定基準に達した企業に「Bコープ認証」を付与するなどして活動を広めている。食品大手ダノンやアウトドア用品のパタゴニアなど世界101カ国、8900社以上が認証され、日々増加中だ。日本での普及を推進するB Market Builder Japanの共同代表で、自社でもBコープ認証を取得した溝渕由樹氏にインタビューした。全3回の連載でお届けする。連載3回目の最終回は、Bコープグローバルが現在進める認証基準の改定についてです。(聞き手・文/ダイヤモンド社 論説委員 大坪 亮)

認証基準改定はオープンで
外部の意見を集めて進む

――B Lab(Bラボ)は今、認証のあり方を改定中ですね。

 B Labは、Bコープの認証スタンダードについて、 3年に1回のミニマムチェックと、3年に1回の大幅改定を繰り返してます。16年前に始まってからすでに6回改定がなされていますが、次の改定は、過去最大のものになります。

 来年2025年に公開になって1年間の周知期間を経て、26年に申請を出す企業からその新しいBインパクトアセスメント(BIA)にのっとった審査に切り替わっていく予定です。

 前回から今回の改定の間に、コロナ禍があったり、Bコープがグローバル、特にヨーロッパで急速に広がっていったりする中で、アメリカ基準で出来上がったものから、全世界での社会問題などを考慮して、インクルーシブや公平やリジェネラティブということを取り入れた内容に変わろうとしています。

――その過程の中で日本の課題意識や意見も反映されるのですか。

 日本だけに限らず、全世界でローカルな事情はあります。改定案は全部オープンになっていました。現時点ではすでに一旦クローズされましたが、しばらくの期間、「この案に対するフィードバックを各地域からしてください」と呼びかけられました。 

 Bコープ関係者だけでなく、一般の人でもB Labグローバルのウェブサイトにアクセスすると見ることができて、意見を言えるようになっていました。そういうオープンなプロセスをB Labは大切にしています。

 私たちも、「BIAのこの部分は日本のネイチャーとちょっと合ってない」とか「日本だともっとこういうところが重要だと思う」という意見は伝えました。 

――例えばどんなことですか。

 ジェンダーについての課題意識は欧米に比べて日本社会はまだまだだとか、民族の考え方は定義からしてローカルで違うとか、ですね。日本は初めてBMBJとして改定審査に入っています。新しい2025年のBIAにはテキストとして入らなくても、今後そういう考え方は審査に反映していくことはできます。

――現状の認証規定では、合計で80点に達すればパスできるとありますが、今後は9つの項目すべてで到達すべき点があるようですね。

 そうですね。今まではトータルで80点あれば多少各項目の点が低くても認証取得できたのですが、「それだと偏りがあってBコープ認証としては問題だね」という議論になったのです。9項目すべてが大切だ、と。

 未確定なのですが、全部のジャンルでミニマムは満たす必要があり、その上で3段階ぐらいの評価になるようです。

――であれば、今のうちの方が、比較的楽に取得できるということはあるのでしょうか。

 駆け込みで取得しても、3年に1度の認証更新があるので、その時に次回の新しい基準を満たしていないと認められなくなります。

 Bコープであってもウォッシングみたいな問題は出てくるので、それを回避するための今回の改定です。したがってBMBJとしては、どちらかというと新しい基準を視野に入れて対応できる会社に今後はBコープを申請してもらいたいと考えています。

 ただし、Bコープ認証取得まで至らなくても、多くの会社がBIAを活用してより良くなることは大歓迎です。BIAを取り入れる企業が増えていき、結果的に全部パスできたら認証を取りに行くというのはいいことだと思います。

Bコープ認証基準は、より包摂的・公平に改善されていくBコープ認証企業であるovgo Bakerもそのマークを店舗内外で前面に打ち出している。