ビジネスを通じて社会を変える「Bコープ」ムーブメントを加速させていく溝渕由樹(みぞぶち・ゆき)。
B Market Builder Japan共同代表、ovgo Baker創業者。慶應義塾大学法学部卒業。三井物産勤務などを経て、2020年にovgo Baker創業。24 年3月にB Market Builder Japanを新体制で発足し、共同代表に就任した。
Photo by Aiko Suzuki

インクルーシブ(包摂的)かつ公平で、リジェネラティブ(再生型)経済システムへの変革を目指すムーブメント「B Corporation(B Corp、Bコープ)」。一定基準に達した企業に「Bコープ認証」を付与するなどして活動を広めている。食品大手ダノンやアウトドア用品のパタゴニアなど世界101カ国、8900社以上が認証され、日々増加中だ。日本での普及を推進するB Market Builder Japanの共同代表で、自社でもBコープ認証を取得した溝渕由樹氏にインタビューした。全3回の連載でお届けする。(聞き手・文/ダイヤモンド社 論説委員 大坪 亮)

Bコープ認証を
スピーディにする体制が整う

――Bコープの日本での普及を推進するB Market Builder Japan(BMBJ)が今年3月、新体制で発足しました。BMBJはどのような組織で、どのような活動をするのですか。 

 BMBJは、Bコープ認証を提供するアメリカNPO法人B Lab(Bラボ)の公式パートナーです。主に日本におけるBコープの普及、その認証取得のための環境整備、コミュニティの活性化などを推進しています。

 そもそもBコープというムーブメントの目標は、「インクルーシブかつ公平で、リジェネラティブな経済システムへの変革」です。その変革をビジネスを通じて実現しようとする企業を奨励し、Bインパクトアセスメント(BIA)という基準で評価します。

 表1のような、ガバナンス、ワーカー、コミュニティ、エンバイロメント、カスタマーの5つの分野で、約200の設問のBIAにおいて200満点で80点以上に達した企業が申請すると、Bラボが検証し、その審査に通ると「Bコープ認証」が付与されます。

 BMBJは、日本企業のBコープ認証を推進するとともに、このBIAを使って会社や社会をより良くする活動を広めていきます。BIAは、BMBJウェブサイトに日本語訳を公開していますので、ぜひともご覧ください。

――BMBJも、Bコープ認証の審査を担うのですか。

 審査を担うのは、B Lab グローバルですが、認証取得を希望する企業がその申請を行うと、BIAにきちんと回答して正しく書類を記入しているかなど、審査がよりスムーズに進むようにBMBJが日本語でのサポートを始めました。なお、審査のインタビューは今後も英語でB Labグローバルと申請企業の間のみで行います。

 また、アジアのローカルパートナーの結束を図る機能も強化するという考えもB Labグローバルにあり、そこでの日本のコミットメントもBMBJは求められています。

――溝渕さんはなぜBMBJの共同代表になったのですか。

 B Lab グローバルの公募があり、もう一人の共同代表の鳥居希さんなど数人とチームを組んで応募して、選ばれました。鳥居さんは、B Lab公認の日本語書籍『B Corpハンドブック: よいビジネスの計測・実践・改善』(バリューブックス・パブリッシング、 2022年)を監修・編集しています。

――世界で30以上のグローバルパートナーがあり、ヨーロッパはB LabフランスやB LabドイツなどB Labという名称です。B Market Builderとは格が違うのですか。

 BMBJは2年後にB Lab ジャパンになる想定で、今体制を整えているところです。ある程度のBコープ認証企業の数を増やすとか社会的認知基盤を作るといった段階です。例えば中国や東南アジアなども同様で、B Market Builderの名称が使われています。

 日本は近年増加ペースが上がり、今年6月段階で40企業を超えるまでになりました。申請件数が増え、審査待ち時間が長くなってきたので、認証プロセスをスムーズにするためにBMBJ新体制の公募があったようです。