これは、ご本人の意思を最大限に尊重してきた結果ですし、望んだとおりの状態なのかもしれません。でも、最期まで自立して生きていくには、乗り越えるべき壁があることを意識せざるを得ませんでした。

 急に身体が思うように動かなくなったり、入院を余儀なくされたり、介護施設や老人ホームへの入居が必要になったり。

 あるいは、認知機能が衰えてしまって、いろんな契約ごとが自分の意思で行えなくなったり、お金を自由に使えなくなったり。入院が必要なのに、保証人や身元引受人が見つからず、なかなか入院できないケースもあります。

 このように突然、「いつかこうしよう、ああしよう」と思っていたことができなくなってしまうことがあるのです。

 元気じゃなくなったときの準備は、元気なうちにしかできません。

壁をうまく越えるには?

 多くのおひとりさまとお会いする中で感じるのは、「壁」を上手に越える人と、「壁」を見て見ぬ振りをする人がいること。そして、うまく「壁」を越えられる人ほど、自分の生き方に納得していて、幸せに暮らしているように思えます。

 もちろん、幸せかどうかはご本人の感じ方によります。ただ、私が実際に暮らしぶりや部屋の様子を見ていると、何の不安も後悔もなくスッキリとされている方には、ある共通したコツがありました。

 それはこの2つです。

・自分でできないことが増えても、自分で決める
・孤独は適度に楽しみながら、孤立はしない

 たとえば、老後ひとり暮らしの人の関心事に、住み替えの選択や相続があります。

 私が生前整理の仕事で出会った80代のひとり暮らし女性は、それまで暮らしていた一戸建ての広い家を処分することに決めました。もともとは旦那さんと住んでいたのが先立たれ、そのままひとりで住み続けていたのです。ところがあるとき急に倒れてしまい、数カ月の入院を余儀なくされてしまいました。困ったのは入院中の家の世話です。