老後の一人暮らしで「幸せになる人」と「不幸になる人」を分ける2つのポイントPhoto:PIXTA

独身を通してきた人をはじめ、配偶者と死別・離別した人など、世の中にはさまざまな事情で「おひとりさま」として暮らす人がいます。しかし一口におひとりさまと言っても、年齢を重ねた後も幸せに生きていける人と、不安やストレスにさいなまれながら生きていく人に分かれるのが現実です。両者を分ける「壁」の正体は何なのでしょうか。生前整理・遺品整理のプロ、山村秀炯(やまむら・しゅうけい)氏の書籍『老後ひとり暮らしの壁』から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「壁を越えられる人の共通点」について。

老後ひとり暮らしには「壁」もある

 私はひとり暮らしの方の部屋の片付けや、介護施設などのご紹介、または亡くなられた方の遺品整理の専門家として、たくさんの「おひとりさま」の生活に触れてきました。

 出会った方の多くはこんなふうに言います。

「自分のことは自分でやりたい」
「この歳になって他人に迷惑をかけたくない」

 できるだけ自立して生きていきたい、ということでしょう。

 しかし、あまり考えたくないことですが、老後のひとり暮らしには、若い頃や家族と暮らしているときとは違った「壁」があるのは事実です。

 以前、こんな方に出会いました。

 ある70代の男性です。とにかく他人の世話になるのが嫌で、人付き合いをほとんどしないで暮らしていました。もともと建築関係のお仕事をされていて体力には自信があったようですが、無情にも体は衰えていきます。私がお会いしたときは、すでに足を悪くされていて下半身の自由がきかず、這いずるようにして部屋の中を移動していました。それでもなお、人の手は借りたくないし、頼る人もいないのです。

 自由なひとり暮らしを手放したくないために、施設への入居は頑なに拒んできたそうです。しかし自由でありたい気持ちとは裏腹に、自分でできることは減っていきます。買い物にも満足に出かけられないため、甥が定期的に食料や日用品を届けています。食事やお風呂などは訪問介護のヘルパーさんの助けでなんとか成り立っている状況でした。