独身を通してきた人をはじめ、配偶者と死別・離別した人など、世の中にはさまざまな事情で「おひとりさま」として暮らす人がいます。しかし一口におひとりさまと言っても、年齢を重ねた後も幸せに生きていける人と、不安やストレスにさいなまれながら生きていく人に分かれるのが現実です。両者を分ける「壁」の正体は何なのでしょうか。生前整理・遺品整理のプロ、山村秀炯(やまむら・しゅうけい)氏の書籍『老後ひとり暮らしの壁』から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「孤独死の実態」について。
孤独死の本当の問題
とある「おひとりさま」の話をさせてください。
その方は30代の男性で、独身で賃貸アパートの2階でひとり暮らしをしていました。
まだ若いのですが肥満体質で、糖尿病と高血圧をわずらっていました。
その病気が原因で自宅で亡くなったのですが、救急車を呼ぶこともなくひっそりと亡くなったので、誰にも気づかれないままに何週間も経過してしまいました。
仕事はしていたのですが、どうやら毎日オフィスに出勤するような働き方ではなかったようで、連絡が取れなくなっても自宅まで訪ねる人がいなかったようなのです。
普段からきちんと連絡するようなタイプでないと、特に若い男性の場合は、衝動的に旅に出るなんてこともあるだろうと、それほど心配もされません。
人間は生物なので、亡くなってから数日でご遺体が腐り始めます。
それが夏場だったりすると、何週間も経つうちに体が溶けて体液が床を汚します。虫が湧いて、ひどい悪臭を発します。
最終的に下の階の天井に染みと臭いが出てきて、大家さんにクレームが入り、ご遺体が発見されました。
こうして、大家さんから部屋を借りるときの保証人になっていた親族に連絡が入り、その親族から私のところに「遺品整理」のご依頼がありました。