金利上昇の動きを見て、変動型の住宅ローンを組むこと、借り続けることに不安を感じる人が増えているようです。しかし、そうした不安とは裏腹に、ネット銀行を中心として変動型の住宅ローンの金利を下げる傾向は続いており、PayPay銀行は7月から住宅ローンの変動金利を「0.315%」から「0.27%」へと引き下げて話題を呼びました。
日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOであり、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』を上梓しした塩澤崇氏に、1000万円単位のメリットも生み出すという「住宅ローンの借り換え」について解説してもらいます。
借り換えで得する仕組み
皆さんの中には、すでに住宅ローンを組んでいる方もいらっしゃるでしょう。
ここまでにお伝えしたことを読んで、「最近の変動金利はそんなに安いの? 以前借りたときはもっと高かった」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、「借り換え」をすることで金利を削減できる可能性があります。
借り換えとは、別の銀行から新しくローンを借り入れて、その融資金で今のローンを完済することです。たとえばA銀行で住宅ローンを組んでいたけれど、金利や団信が充実したB銀行のローンに魅力を感じたなら、A銀行からB銀行への借り換えができるのです。こうすることで金利の支払額を大きく引き下げたり、保障を手厚くすることができます。
ただし、借り換えをするにはあらためて審査を受ける必要がありますし、諸費用がかかります。住宅ローンを新たに借り入れるための融資手数料、抵当権の設定費用、印紙税などがかかり、借入金額のおよそ3~4%程度のお金が必要になります。ただ、最近の銀行はこれら諸費用も借り換え先ローンに含めて融資してくれるので、新たな出費をせずに借り換えられるのが一般的です。借り換えのハードルは本当に下がりました。
以上のことから、「私は借り換えをすべき?」と思ったら、次のことを考えましょう。
「借り換えの諸費用を引いた後、お得になるか?」
これがイエスなら借り換えをすべきですし、ノーなら借り換えは考える必要はありません。金利を減らす行為ですから、イエスならやらない理由がないです。
では、ここからは借り換えによる金利の削減額から諸費用を差し引いたうえでの利益を「借り換えメリット」と表記して詳しく説明していきます。
まず、借り換えメリットが出やすいのは次の3パターンであることを押さえておきましょう。
1 金利差が大きい
2 残元本が多い
3 残期間が長い
この3点すべてを満たす場合、とても大きな借り換えメリットを得られる可能性があります。少なくとも数百万円単位、場合によっては1000万円を超える借り換えメリットを期待できるでしょう。なお、私が把握している過去最高額は2000万円でした!(元本8000万円、金利2.5%、残り25年の方)
これだけお得な仕組みであるにもかかわらず、高い金利の住宅ローンを借りたままで、借り換えの検討をしていない人が少なくありません。借り換えを検討している人がそれほど多くない理由は一概にはいえませんが、つい面倒に感じて後回しになってしまう人が多いのだと思います。
でも、「家計の節約」のためのアクションとして、借り換えをやらない理由はまったくありません。
節約が大事なことは誰もが理解していると思いますが、そのために電気をこまめに消したり、晩酌のビールを発泡酒に変えたりするのは、やはり苦しいですよね。このような「変動費」の節約は、毎回我慢を強いられている感じがして、続けるのが難しいものです。
でも住宅ローンは、毎月一定額がかかる「固定費」ですから、一度借り換えをすれば節約効果が何十年も続きます。スマホのキャリアを変えるとその後もずっと自動的に節約効果があるように、借り換えは精神的な負担なく大きな金額を節約できる最強の節約術なのです。しかも、住宅ローンはその固定費の中で最大のものです。
さてここで、「自分は最初から変動金利で組んだから大丈夫」「金利が下がってるのだから、今組んでる変動金利も自動的に下がるんでしょ?」と思っている人はいないでしょうか?
もしそう思って借り換えの検討をしていないのであれば、非常にもったいないです。
過去20年近く、一貫して変動金利は下がり続けてきましたが、それは新たに借り入れる人向けの金利が下がっているだけであり、2009年以降に借りた人の金利は今に至るまで下がっていません。変動金利を借りた後、ご自身の適用金利が下がるかどうかは基準金利次第で、ほとんどの銀行で基準金利は2009年以降下がっていないからです。このため、「すでに借りている変動金利が自動的に下がる」ということにはなっていないのです。つまり、借り換えを実行しない限り、今の住宅ローンを減らすことはできないのです。
ですので、金利を減らしたいのであれば、借り換えで今よりも大きな引き下げ幅を得ることが大切です。「借り換え=より大きな引き下げ幅を得る行為」と考えてもらってかまいません。銀行間の金利競争が激化している昨今ですから、チャンスは十分あるでしょう。団信の条件も日進月歩でよくなっていますから、お得な保障もセットでついてくるかもしれません。「変動金利から変動金利」の借り換えも検討する価値は大いにあります。どうせ金利上昇リスクがあるなら、そもそもの金利水準を下げておいたほうが絶対理にかなっていますよ!
(※この記事は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の一部を改変し公開しています。)