日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」(株式会社MFS)を運営する塩澤崇氏が、住宅ローンにまつわるお金の新常識を解説した決定版『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』を5月に上梓した。これからローンを組む人だけでなく、すでに組んでいる人にも役立つアドバイスが満載の本書は、「もっと早く出合いたかった」と反響を呼んでいる。今回は、「利上げがあるのでは?」と憶測が飛んでいる今月末の日銀金融政策決定会合を前に、住宅ローンの支払いをお得にする方法について塩澤さんに伺った。(聞き手/『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者 安達裕哉氏、構成/ダイヤモンド社 根本隼)

「最大で2000万円お得になった人も」住宅ローンの支払いが安くなる“すごい方法”Photo:Adobe Stock

借り換えの労は惜しまないほうがいい

――塩澤さんは、ご著書の中で「ローン返済中なら一度は『変動金利への借り換え』を検討すべき」とおっしゃっていました。実際、どれくらいお得になるんでしょうか?

塩澤崇(以下、塩澤) お得になる金額は、借り換えの諸費用を差し引いて計算しないといけません。これは、元本の約2.5〜3%とそれなりにかかります。ただ、この費用は借り換え後の新しいローンに含めて融資してくれるので、手元の資金を取り崩す必要はありません。

 また、借り換えにも「審査」という煩雑な手続きがありますが、トータルの金銭面でお得になるなら労を惜しまない方がいいと思います。

 実際、私のもとに相談に来る方々の約半数は、借り換えで100万円以上お得になっていますよ。

――おお! やらない手はないですね。

塩澤 しかも、インフレで足元の物価は上がってきています。そんななかで、見直すべきなのはやはり「固定費」。なかでも大きな割合を占める住宅ローンに手をつけるのが、費用対効果が最も高いはずです。

 ちなみに、過去には、借り換えでなんと2000万円もお得になった方がいました。ここまでくると、もう1軒お家が買えるレベルですよね(笑)。

 これはもちろん極端な例ですが、必要以上に高い金利で借りているのをほったらかしにしている人は本当に多いんです。

借り換えるなら「早いほどお得」

――やはり、金利を見直さないのは怖いですね。

塩澤 はい、定期的に見直すことが大切です。そして、もう1点重要なのが、借り換えをやるなら「いますぐやるべき」だということです。なぜなら、住宅ローンの金利は「残っている元本」に対してかかるからです。

 たとえば、元本が2500万円残っていて、支払い金利が0.7%から0.2%まで下がったとすると、2500万円×0.5%分がお得になります。しかし、元本が残り1000万円だったら、1000万円×0.5%分しかメリットはありません。

 なので、「面倒くさい」とか「金利の動向を様子見したい」という理由で借り換えを先送りすると、元本がどんどん目減りして、それだけ借り換えのメリットも目減りしていくんです。

――お金で豊かになりたければ、投資に目を向ける前に、住宅ローンの借り換えを検討したほうがよさそうですね。

塩澤 そうなんです。投資はリターンが取れるかどうか定かではありませんが、借り換えで支払い金利が下がるのであれば、確実に固定費を減らすことができます

 借り換え手続きの詳しい進め方については、本書にまとめましたが、まずはぜひご自身の金利の見直しから始めてほしいですね。

(本稿は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の著者・塩澤崇氏へのインタビューをもとに構成しました)

塩澤崇(しおざわ・たかし)
株式会社MFS 取締役COO
2006年、東京大学大学院情報理工学系研究科修了(専攻:数理情報学)。同年よりモルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスを推進。2009年、ボストン コンサルティング グループに入社し、金融機関向けの戦略コンサルティングに従事。2015年9月より、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOとして金融機関提携・オペレーション・事業提携・広報を管掌。全国紙でのコメント掲載やTVへの出演実績も多数。『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』が初の著書。