101歳、現役の化粧品販売員として活躍している堀野智子(トモコ)さん。累計売上高は約1億3000万円で、「最高齢のビューティーアドバイザー」としてギネス世界記録に認定されたキャリア61年のトモコさんが、年をとるほど働くのが楽しくなる50の知恵を初公開した話題の書『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものをお送りする。佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が「堀野氏の技法は、ヒュミント(人間による情報収集活動)にも応用できる」と絶賛(日刊ゲンダイ・週末オススメ本ミシュラン)する世界一の先輩による“人生訓”は、アナタの疲れた心を元気にしてくれる!

101歳、世界最高齢の現役営業が教える! 安定収入の公務員の夫が、家計にお金を入れなかったワケ写真:POLA提供

年上の部下を
たくさん持つ立場に

戦後のどさくさも少しずつ収まり、主人も福島県の正規職員として就職。やれやれと胸をなでおろした……はずだったのですが、そうは問屋が卸しませんでした。

当時、公務員試験には「初級」「中級」「上級」と、最終学歴によって受けられる試験が違っていました。

大卒の主人は「上級」の公務員として採用されたので、思いのほか出世が早く、30歳になるかならないかで係長に昇進して、年上の部下をたくさん持つようになりました。

部下に飲ませ食わせ……

岩手では臨時職員だったうえ、戦後の配給の時代で満足に食べ物も手に入らなかったので、主人の浪費癖は収まっていたのですが、今度は部下に飲ませ食わせするためにお金を使い始めたのです。

とはいえ、満鉄勤めの義父がたくさんの仕送りをしてきたころとは違って、お金をたくさん持っているわけではありません。

そこで主人は、全部“ツケ”で部下に飲ませ食わせするようになったのです。

部下にお金を使い
家計には入金ゼロ……

給料日には主人の行きつけの店のママさんたちが、ツケを払ってもらおうとやってきて、あっという間に給料袋はカラに……毎月のように、そんなことの繰り返しなわけです。

だから、家に入れるお金はゼロ。給料日の翌朝、玄関に給与明細だけが入った給料袋を置き、「行ってきます」とすまし顔で県庁へと出勤していきます。

「はぁ? 給料日にお金を持ってこないってどういうこと? どうやって生活しろって言うの?」と愕然としました。その日の夜、帰宅した主人をつかまえて、「いったい、どうするつもり?」と問い詰めたんです。

すると「うん、そうだなあ、泥棒でもしてくるしかないか」とこうですよ。暖簾に腕押しというか、糠に釘というか……二の句が継げないとはこのことです。

夫に頼らず
自分で稼ぐことを決意

そのとき、私はこう思ってしまったのです。「もうこの人を頼ってもダメだ。自分で何とかしよう」と。

私のそんな考え方が、甘やかされたボンボンの主人を助長した部分はあったと思います。

でもそのときは、それよりもまず「今日、どうやってご飯を食べるか」のほうがずっと大事で、それには自分が働くしかないというふうにしか思えなかったんです。

自分で稼ぐために
始めたこと

そこで始めたのが、薬屋さんの箱づくりの内職でした。隣の奥さんがやっているのを知って、「私にもやらせて」と頼んで、やるようになりました。手先が器用なのが、この窮状でも活きてきたんですね。

箱づくりは、まず糊を煮てつくるところから始まります。材料になる紙をずらっと並べて、順番に糊づけして組み立てていくのですが、中で仕切りをつくらなければならず、ちょっとしたコツが必要でした。

紙が糊で湿り気を帯びたタイミングで、仕切りになる紙を押し入れ、本体にぴったりと貼り合わせなければなりません。仕切りを貼る位置がズレると使い物にならないので、ある種の器用さが求められる仕事でした。

※本稿は、『101歳、現役の化粧品販売員 トモコさんの一生楽しく働く教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。