母は、霊媒となった人の体を借り、私の問いに答えてくれました。母しか知るはずのない、これまで私が誰にも話したことのなかった詳細なども正確に話したのです。また、霊媒となってくれた知人の降霊中の口調や立ち居振る舞いは、母との面識がなかったにもかかわらず、驚くほど母の生前の特徴そのままでした。そこに母がいるのでは、と錯覚を起こしたほどです。
 それ以来、なぜか私には、不思議な安心感のようなものが生まれてきました。
 死に対する漠然とした恐怖感が消えたのです。
「あの世」という異界の存在を、さまざまな書物や人の体験談以外で知ったのもこの時です。
 この体験は鮮烈でした。文字や他人から聞いた話や、同じ交霊でも知らない人(霊)から知らされるのと、他界した肉親から目の前で知らされるのとでは大きな開きがあることも実感しました。
 同時に私は、「あの世」と呼ばれるようなものの存在があること、人は肉体死を迎えても魂は滅しないこと、つまり、見えない世界の存在に確証のようなものを得たのです。

 現在の科学力では解明できませんが、魂は存在します。
 私たちが死後に行く場所、一般的に言えば「あの世」と呼べるようなものも明確に存在しますが、いきなり全部は無理としても、少しずつこれらの事実を理解されると、私たちがこの世に生を受けた日から旅立ちの時、つまり生まれてから死ぬまでの年月が愛しく感じられます。
 すると、死という「お別れ」に関する逝く側、送る側それぞれの「作法」が、実に興味深いものへと変わるものと思います。
 輪廻転生があるからこそ、つまり「死後の生」があるからこそ、私は死というお別れには作法が必要だと思っています。

次回は、「逝く人の作法」「送る人の作法」を紹介します。
  4月18日更新予定です。


 

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