手探りでドロドロになって戦っているのは、私だけではなかった

 仕事中に気絶までして大失態を犯した私ですが、ファニーのおかげでなんだかスッキリしていました。翌日職場に戻る頃には自分をさらけ出すことができるようになっていました。

「実は今、離婚とかで、いろいろキツくて」

 そう打ち明けると、それまで心が通わなかった新しい上司も、遠巻きに見ていた同僚もすんなり心を開いてくれました。「私も」と、次々に苦労話を打ち明けてくれるようになりました。頑張りまくって根を上げない私こそ、皆の目には無限大のパワーを持つスーパーウーマンに映っていたのです。図らずも、そんな私は敬遠されていたのです。

 ふたを開けてみると、「キラキラなパリジェンヌ」もそれぞれに苦労を抱えながら生きていることがわかりました。自分に精一杯の私は、そんな当たり前のことが見えていなかったのです。障害者の子どもを育てている人。幼少期に親戚から性的暴行を受けたため、今になってうつ病を発症している旦那のケアをしている人。癌が再発した親を介護している人。人生が次々に課す試練に本腰の人、逃げ腰の人。そこから生まれる複雑な感情に当惑する人、目を背ける人。手探りでドロドロになって戦っているのは、私だけではなかったのです。

本当に強い人とは、自分の心に耳を傾けることが出来る人

 心の中にある迷い、後悔、矛盾。私達はそれが「弱み」だと思ってしまいます。私はそれまで「弱みは決して見せてはいけない」と思って生きてきました。肩肘張っていれば強くなれると思っていました。ですが、それは間違っていたのです。

 本当に強い人とは、自分の心に耳を傾けることが出来る人です。自分の中にある葛藤を認め、心の傷をさらけ出すことが出来る人です。そしてキツイならキツイと、正直に言うことが出来る人です。

 キラキラに見えるパリジェンヌの実態は、驚くほど自然体です。彼女達の秘訣は、ドロドロを包み隠さずにさらけ出すことにあったのです。

※本稿は『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。