農林中央金庫が「2兆円の赤字」に陥る可能性をJAに示唆、悪い情報の“小出し”が農協の不信を呼ぶ5月の会見で、「今期は5000億円超の赤字を見込む」と話す奥和登理事長 Photo:JIJI

農林中央金庫が2024年度に2兆円規模の赤字に陥る可能性を農協に示唆していることが、ダイヤモンド編集部の調べで分かった。赤字見込み額は、5月上旬の7800億円から2倍以上に膨らんだ。農林中金は農協などに対して1.2兆円の増資に応じるよう要請しているが、悪い情報を“小出し”にする姿勢が農協の不信を招いている。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

2カ月で倍以上に膨らんだ赤字見込み額

「農林中央金庫の巨額赤字と増資の必要性については昨年からいわれていた。農林中金が農協などに示す見通しは、楽観から悲観に変わることが多かった。農協は疑心暗鬼になっている」

 JAグループの全国機関の幹部が声を潜めて内情を明かした。筆者がこの発言を聞いたのは、農林中金が2025年3月期に7800億円の最終赤字となる見通しであることを本誌が報じた5月のことだ。

 悪い情報を小出しにする農林中金の悪癖は、5月以降も続いた。何と直近では、「2兆円規模の赤字」を内部で示唆。赤字見込み額が2カ月で倍以上に膨らんでいるのだ。

 本稿では、農林中金の赤字見通しの変遷を、内部資料を踏まえて明らかにする。

 その前に、農林中金の窮状を簡単に説明しよう。米国の金利上昇の影響で、農林中金が保有する外国債券が値下がりし、有価証券の含み損は24年3月末で1.8兆円に膨らんだ。農林中金は低利回り債券の損切りを迫られ、25年3月期には巨額赤字に沈む見通しを示している。

 それに伴い、農林中金は1.2兆円の資本増強への協力を、農協や都道府県段階にある信連(信用農業協同組合連合会)などに要請している。

 次ページでは、大幅な業績予想の下方修正を繰り返す農林中金の組織内外に向けた情報発信の実態と、農協幹部からの不信の声を明らかにする。