なぜ東大卒は僕の学歴を絶賛したのか

「高卒の話なんて、説得力あるのかな?」「誰も参加しないんじゃないかな?」
 不安ばかりで当日を迎えましたが、ありがたいことに10人ほどの方が参加してくれました。

 約2時間のセミナーを終え、「やっと終わった……」と一息ついていたとき、参加者の男性が名刺交換を求めてきました。その人は金融系のお仕事をしていて、なんと東大卒ということが会話のなかでわかりました。僕は思わず言ってしまいました。

「僕は高卒で……東大卒のような方のお役に立てる話ができたか不安です」

 すると、男性は少し興奮気味に「いえ! とっても勉強になりました!」と。そして、続けてこう言いました。

「最初はビックリしたんです。セミナーをするような優秀な方は大卒のイメージが強かったので。でも高卒なのかって……」

「そうですよね……」と、僕が言おうとした瞬間、男性が一言。

「それって、すごい強みですね!」

「……えっ!?」
 思わず大きなリアクションを取ってしまい、他の参加者に驚かれました。意外な言葉に戸惑っていると、彼はこう尋ねてきました。

「福島さんは、ハーバード流とか聞いてピンときますか?」

 よく本や広告で見かけてはいましたが、正直なところ、僕にはまったくピンときていませんでした。大学にすら行っていないのですから、世界が違いすぎて想像もつきません。そう答えたところ、彼はこう言いました。

「大卒は日本人の半分だと言われています。だから大卒の僕が何を話しても、半分の人にしか響かないかもしれません。でも福島さんの話は同じ高卒の人にもきっと響くし、大卒の僕にだって響きました。それってすごい強みじゃないですか!」

 必死に隠していたことが別の人からは強みに見えるなんて、驚きでした。

優れているか、劣っているかなんて、
決めつけなくていい

 このセミナー以降、「高卒」であることは僕の強みになり、誇りになりました。聞かれてもいないのに「僕は高卒なんです!」とアピールしているほどです。学歴コンプレックスになってから10年以上が経っていましたが、やっと本当の自分を受け入れることができました。

 するとお客様も自己開示してくださり、より腹を割って話せるようになりました。深くつながれる人脈も増え、営業機会にも恵まれていきました。
 なによりその日以降、心がとっても軽くなりました。

 鎧を着込んでしまうのは、自分のことを「弱い」と思っているからです。自分の能力や特性を「劣っている」と決めつけているからです。

 その決めつけをやめて鎧を脱いでみると、これまで自分の「弱さ」だと思っていたものがじつは「強み」になることもあります。僕も鎧を脱いだことで、いちばんのコンプレックスが最大の強みに変わりました。

(本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。)

福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数が激増し、社内表彰されるほどの成績となった。その後、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。