「高卒という経歴は、僕の強みです」
そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、リッツ・カールトンで磨いた「目の前の人の記憶に残る技術」を応用した独自の手法を実践したことで、わずか1年で紹介数が激増。社内で表彰されるほどの成績を出しました。
その福島さんの初の著書が記憶に残る人になるガツガツせずに信頼を得るための考え方が満載で、「本質的な内容にとても共感した!」「営業にかぎらず、人と向き合うすべての仕事に役立つと思う!」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、強みと弱みについての考え方を紹介します。

「高卒だなんて、すごい強みですね!」学歴にコンプレックスを感じていた営業マンの心を動かした、元東大生の「考え方」とは?Photo: Adobe Stock

「高卒」というコンプレックス

 僕の最終学歴は「高校卒業」です。
 ホテル時代には学歴を聞かれることもありませんでしたが、営業では学歴を意識してしまう場面が数多くありました。たとえば会食や交流会での会話で、「地元が愛媛ということは、大学から東京に?」と聞かれるのが、つらかった……。

 バーテンダーをしていた20代の頃には、交際していた女性のご両親に、学歴と職業を理由に交際を猛反対されたこともあります。
「ちゃんと大学に行っていれば……」と、何度も後悔しました。たかが学歴ですが、僕にとって克服することのできない大きなコンプレックスだったのです。

 ですがコンプレックスは、見方を変えると自分の強みに変わります。この「学歴コンプレックス」は、あるきっかけで鎧を脱いだことで強みに変わりました(なかば強制的ではありましたが……)。

僕が「高卒」だと明かした瞬間

 それは、あるコワーキング・スペースを経営するお客様からセミナー登壇の依頼を受けたときのことでした。その会社では、利用者向けにセミナーを開催していて、その一環で「紹介営業」の話をしてほしいと依頼があったのです。

 営業3年目のときにビジネス誌に掲載されたことで登壇の依頼が増え、僕は人前で話すことにも慣れつつありました。アメックスの広報部にも報告したうえで、引き受けることにしました。

 ただ、今回はひとつだけ、いつもと違うことがありました。
 それまでは会社の社員や勉強会の参加者だけなど特定の人が対象でしたが、今回はチケットの販売サイトを通じて、不特定多数の方にセミナーが販売されるというのです。

 とはいえ会社の許可も出ていたので、その点にはそれほど悩みませんでした。問題は、その後に主催者からされたお願いです。

「福島さんの経歴を販売ページに載せるので、このフォームを埋めてください」

 送っていただいたフォームを見ると、氏名や職業に続いて、「最終学歴」という項目があったのです……。

「これは書かないとダメですか?」

 そう伺ったところ、「はい、そのほうが信頼度が上がるので」と担当者さん。一度は引き受けたものの、お断りしてしまおうかと悩みました。それくらい、「高卒」と明かしたくなかったんです。
「さて、どうしたものか……」と悩みながら、その日の夜、駅から自宅まで歩いていると、ふと思いました。

「そうか、これは鎧を脱ぐチャンスなのかもしれない」

 帰宅した僕は真っ先にパソコンを開き、フォームの最終学歴欄に「〇〇高等学校卒業」と入力しました。続けて、セミナータイトルを決めました。

『学歴なし。人脈なし。それでもトップ営業になれる極意』

 どうせバラすのなら、盛大にバラしてやれと考えたわけです。入力し終わったフォームの送信ボタンを、僕は震える指で押しました。