「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
新しいことへの挑戦は
反対がつきもの
私がコンサルティングをしている会社に、既存事業だけでは先細りになる危機感から、新製品をつくるために新工場を建設したり、従来よりも大規模な店舗を出店したりと、果敢に先行投資をするケースがみられます。
新規事業への先行投資は、つねにリスクがともないます。しばらくは事業単体で赤字が続くかもしれませんし、日の目を見ないまま失敗に終わることだってあるかもしれません。
そのため、このような新しいことへの挑戦は、社内外からの反対がつきものです。
反対にあいながら
リスクを負えるか?
実際、私がコンサルティングをしていた売上高50億円規模の化学品メーカーでは、新製品をつくるための新工場を建設しようとして、経営者が社内で猛反対にあったケースもありました。
しかし、この経営者は、「この投資をしなければ、会社は衰退する」と説得し、リスクを承知で新工場を立ち上げました。この英断が功を奏して、現在では新工場でつくられる製品が、同社の主力製品となり屋台骨になっています。
しかし、残念ながら、このような事例が多いとはいえません。
米中韓に押される日本経済
日本経済新聞社が実施した2022年の「主要商品・サービスシェア調査」によると、世界市場における日本企業の品目別のシェア首位は63品目中6品目止まりでした。首位の品目はアメリカが22と最多で、続く中国は16と日本は大きく水をあけられています。
その記事によると、造船など一部で健闘する日本企業が見られたものの、成長市場でのシェア低下が目立ち、存在感を示せない日本の現状が浮き彫りになっています。
車載用リチウムイオン電池やスマートウオッチなど、新世代の分野は米中韓に押されている状況なのです。
いま求められる
リーダーシップとは?
これは、日本企業が積極的に新規事業にとり組んでこなかったことも一因とされています。では、新規事業というリスクに挑戦するためには、どのようなリーダーシップが求められるのでしょうか?
まず、なぜ新規事業が必要なのかをリーダーが明確に示すことが欠かせません。島津斉彬は、このままでは日本が欧米列強の植民地となりかねないという危機感のもと、富国強兵・殖産興業を訴え、反射炉の建設、ガス灯の製造など、軍事の発展にも寄与したのです。
しかし、多くの人は、現状の居心地がよければよいほど、リスクを負ってまで新たなチャレンジをすることに抵抗感を抱きやすいものです。
リスクを負った英断が
「ゆでガエル現象」を回避する
進む先にじつは危険が迫っているとしても、変化が緩やかだと気づきにくく、気づいたときにはもう手遅れになっているという「ゆでガエル現象」のようなものです。
運命共同体である会社組織が、そのような状態に陥らないために、新たな挑戦をしなければならないことを、理路整然とリーダーが説かなくてはならないのです。
現在、自動車各社のトップがガソリン車からEV(電気自動車)やFCV(水素を燃料とする燃料電池車)にシフトすることを説いているのは、市場に対してと同時に、社内に向けて危機感を伝えている面もあると思います。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。