「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

「本社は立派なビルなのに、私がいる営業所は古びた雑居ビルで不公平だ」と不満を募らす現場に、組織のリーダーはどう対処すべきか?Photo: Adobe Stock

本社と現場の職場環境の格差
でモチベーション低下の愚

以前、私がコンサルティングをした会社では、東京・渋谷にある最新の高層ビル内に本社を構えていました。とても快適な環境のオフィスで、経営陣と全社を管理するスタッフが勤務していました。

一方、地方にある営業所は、築数十年の古い雑居ビルの一室に入居していました。そこで支店長や一部の管理職、それに現地採用された営業スタッフが働いていました。豪奢な本社と古びた営業所という職場環境の格差があったのです。

現場の営業スタッフにヒアリングしたところ、「自分たちが契約を獲得して売り上げを立てているから、賃料の高い最新のビルに本社を構えられているはず。なのに、なぜ自分たちは、こんなに古びた雑居ビルで働かないといけないのか」という声があったのです。

本社より現場を優先して
モチベーションを高める

じつは、この会社の売り上げは、長年伸び悩んでいました。その原因の1つが「職場環境の格差」に起因する、営業スタッフのモチベーションの低さにあったのです。

保科正之の明暦の大火におけるエピソードと、この会社の職場環境の格差を重ね合わせると、「江戸城天守=本社」「江戸の町=営業所」と置き換えることができるでしょう。

つまり、保科の考えのベースには、本社より現場の営業所を優先し、現場に負担をかけず、モチベーションを高めることを優先していたことがあります。

経営資源を配分
するときの優先順位

本社は全社の経営や現場の管理を担うものの、実際に会社へ収益をもたらすのは営業所です。本社スタッフは、「本社だけでは収益はあがらない。現場があってこその本社だ」という意識を共有することが大事だったのです。

その後、経営者をはじめとする本社スタッフの意識改革をして、全社で共有するようにしたことで、古びた雑居ビルにいる営業所のスタッフが抱える不満に落ち着きをもたらすようになりました。

そして、この会社の経営陣が、「人」「モノ」「お金」といった経営資源を配分するときの優先順位に変化をもたらしました。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。