「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

本社は立派なのに営業所はボロボロ…妬まれがちな本社に欠かせない「2つのミッション」とは?Photo: Adobe Stock

現場の満足度向上と
コスト抑制が本社のミッション

私がコンサルティングをしたある会社では、本社の管理費を抑制することで、全社的な利益の底上げを徹底しました。本社は収益をあげない代わりにコストを抑制することで、利益貢献することができるわけですから、これは理にかなった改革です。

実際、コロナ禍によってリモート勤務が普及したこともあり、本社機能を移転したりフロアを縮小したりした会社も少なくありません。賃借料や水道光熱費などのコスト削減につなげれば、そのぶんは利益に直結するのですから、本社であっても利益貢献できるわけです。

日本史上最大級の火災ともいえる「明暦の大火」で江戸が壊滅的な被害に遭ったとき、江戸幕府の中枢を担う立場にあった保科正之の判断によって、江戸城の天守を再建しなかったぶん、幕府に資金を残すことができたのです。

本社と現場は一蓮托生

ただし、やみくもにコスト抑制をするのでは、今度は本社スタッフのモチベーションの低下を招きかねません。本社と現場は一蓮托生ですから、本社は現場の生産性を高めて、より収益をあげてもらうような環境をつくることも使命です。

シンプルに言うと「本社のおかげで働きやすくなり、売り上げをあげやすくなった」と現場の満足度を高めることによって、本社スタッフの満足度も高まるという相乗効果を得やすいのです。

本社に欠かせない
2つのミッション

本社の大きなミッションは、2つあります。それは、「仕事をしやすくなった」と感じられる現場の満足度向上と、本社の運営効率化によるコスト抑制です。

保科は、天守再建を見送ってコストを抑えただけでなく、江戸の生活再建に資金を振り向けたのです。このことにより、大火で被災した多くの民衆から感謝されつつ、江戸の再建が進んだのです。

なお、私がコンサルティングをした会社は、その後、外資系企業に買収され、現場の環境改善が図られたとともに、本社機能のスリム化が進められました。その結果、営業スタッフのモチベーションが高まり、売り上げの向上につながっています。

本社のあり方のポイント
1. 本社スタッフが本社機能だけでは収益はあがらないという意識を共有する
2. 本社はコスト抑制による効率的な運営で利益貢献する
3. 現場の満足度向上とコスト抑制を本社のミッションとする

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。