TPPの日米事前協議合意を機に
問題の本質を理解することが重要
TPPを巡る日米の事前協議が終了し、日米合意が発表された。ようやく1つのステップが進んだが、今後のプロセスも多難である。
今回の合意についても、日米の経済交渉ではよくあることではあるが、同一の合意文書についての日本側と米側の説明ではニュアンスが大きく異なっていたことからも、将来の困難さは容易に推測できる。
日米の合意の基本は(1)米政府として日本のTPP交渉参加を支持すること、(2)日本は包括的で高い水準の協定達成に取り組むこと、(3)自動車については米国の関税はTPPの最も長い関税撤廃期間(10年)によること、(4)自動車貿易及び非関税障壁についてTPPと並行した二国間協議を行うこと、(5)かんぽ生命の新規業務を日本政府は当面認可しないこと、(6)日本の一定の農産品、米国の一定の工業製品といったセンシティビティを認識すること、であると考えられる。
日本の説明では、農産品のセンシティビティが認識されていることに焦点があてられているが、米側の説明ではこのような点については触れず、むしろ、日本は高い水準のTPP達成にコミットしたという点がハイライトされている。そして、自動車、保険、非関税障壁の分野で大きな進展があったという説明がされている。
もちろん、日本が遅れてTPPへの参入を要請しているわけであり、一定の譲歩はやむを得ないことであろう。また、米側は議会との関係が残っており、議会対策を意識した説明となっている。
TPP交渉は、日本に関してはまだ出発点に立ったばかりであり、今回の合意そのもの、あるいはその説明ぶりをとらえて議論する意味はあまりない。それよりも、TPP問題の本質を理解することが何より重要であると思う。
第一に、TPPの戦略的重要性である。米国にとっては、ホワイトハウスのフローマン大統領補佐官(国家安全保障担当副補佐官)が今回の合意を説明する際に冒頭述べたように、TPPは経済面での米国のアジアへの回帰(PIVOT)ないしリバランシングというオバマ大統領のアジア重視政策を体現する戦略的重要性を持っている。