「戦力の逐次投入はしない」。黒田東彦・日本銀行総裁の下で決まった「超弩級」の金融緩和策は、株式や為替、国債の市場に激しい熱気をもたらし、同時に大きな動揺を与え始めた。デフレ脱却に邁進する日銀に対し、金融機関や企業、個人はどう反応し、その先に何を見据えているのか。緩和策が発表された4日以降の動きを追った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史、河野拓郎、中村正毅、宮原啓彰)
「え、小出しでくるんじゃなかったのか」
「おい、正気かよ」
4月4日、午後1時40分過ぎ。日本銀行による世界でも類のない、大規模な金融緩和策の概要が伝わると、大手銀行のディーリングフロアはざわめきに包まれた。
市中への資金供給量(マネタリーベース)を2年で2倍、買い入れる国債の平均残存期間(デュレーション)を7年程度に延長し、保有額の年間増加幅を2倍以上に、歯止めをかける「銀行券ルール」は一時適用を停止──。
行員たちが、通信社の速報や日銀の公表資料を食い入るように見つめ、その衝撃をまだ消化し切れないうちに、株式や外国為替のディーラーの席では電話が次々に鳴り、フロアが騒然とし始めた。
大手証券会社では、買い入れ対象に40年債も加えると速報で伝わると、ヘッジファンドからドル買いの電話がいっせいに入った。