価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

「インサイト発見力」を向上させるためのアイデア筋トレPhoto: Adobe Stock

自分ではない人たちの
意識やトレンドをインプットする

 アイデア筋トレの一環として、「コンビニでいつもとは違う商品を意識して買う」というのは、インサイト発見力を高めるために有効な手段だということをお話ししました。

 他にも、私が行っている方法を簡単にご紹介します。

 ひとつは、自分がターゲットにしていないメディアに積極的に触れて「自分ではない人たち」の意識やトレンド、深層心理などをインプットするというものです。

 すべてをじっくり読んでいくといくら時間があっても足りませんので、時間をかけずになるべくたくさんの雑誌に触れるようにすることが大事です。たとえば、20代から30代向けの女性誌の表紙をすべて眺めていきます。さらに、順番にザッピングのように誌面を見て、見出しだけでも追っていくようにします。

 このような形で、趣味の雑誌なども含めて、できるだけ幅広く見ていくようにしています。

 場所は、図書館の雑誌コーナーなどでもいいですが、定額で雑誌の読み放題となるアプリもあるため、そちらもおすすめです。

 一方、インサイト発見力向上にとっては、スマホのニュースアプリや動画アプリはあまりおすすめできません。いまは、アルゴリズムによって情報が自分に最適化されてしまうため、「自分以外に向けられている情報」に接触することが少なくなってしまうからです。

 そのため、ターゲットがセグメントされている雑誌をおすすめしました。

ネット上でどのような声が多いかを「予想する」

 その他には、ネットの声を予想するということを行っています。

 ニュースや世間のホットトピックがあるときに、ネット上でどのような声が多いのかを「予想する」のです。SNSやヤフコメでの声を「予想した後に」答え合わせのようにして見るようにしています。

 ネット上での声なので、それがそのまま世の中の意見ではありませんが、ヤフコメはこういう反応の傾向がある、X(旧Twitter)ではこういう反応がリツイートされやすいなど感覚がつかめるようになってきます。

 このように日常生活を送りながら、インサイト発見力を高める方法はいろいろと工夫できそうです。皆さんも、自分なりのインサイト発見力を高めていく方法を実践してみてください。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。