自分の好きなことより他人の意見に従ってしまう、選択と決断が苦手、決めてから後悔しがち……。そんな人におすすめなのが、『私はすべて自分で決める。』(チェ・フン著 李明華訳)だ。著者は自分のことを「決められない症候群」と呼ぶほど、自分の選択と決断に自信がなかった。そんな著者がどうやって、「決断のプロ」になったのか、選択と決断のための具体的なノウハウを凝縮したのが本書だ。原書の『選択と決定はタイミングだ』は韓国本国で発売2週間で韓国大手書店で自己啓発ジャンルで1位になるなど注目を集めている。「この本は自分の人生の主役として生きる方法を教えてくれる」「より良い選択をしたいと願う人たちにすすめたい本」など絶賛と共感の声が相次いでいる本書。今回は、本書の発売を記念して特別に本文より一部抜粋、再編集して紹介する。(初出:2022年11月12日)
万人に好かれようとがんばる必要はない
大学時代、同じ科に親しくしていた友人がいた。
彼は私とは正反対の性格の持ち主で、典型的な大邱の男、ワイルドで感情表現や意思表示がはっきりしていた。周囲にはよく不思議がられたものだった。
「2人はまるでちがうタイプなのに、どうして仲良くなったんだ?」
自分でもわからなかった。
親しくなった理由をよくよく考えてみたが、とくにきっかけがあったわけではなかった。
いつからか、自然と親しくなっていた。
もしかしたらたがいに正反対の相手に惹かれたのかもしれない。
どんなときも堂々としている彼は、私にはうらやましくもあった。
まず、彼はみんなに好かれようとしなかった。
私の記憶では、彼はいつもひとりで行動していた。
正確に言えば、どのグループにも属さず、その時々の状況や気分で誰とでも等しく付き合っていた。どのグループが何を言おうと気にせず、人にどう思われようと自分の心の赴くままに行動していた。
ベストセラー作家の本も、有名画家の作品も、万人に感動を与えるわけではない。
「好みに刺さる」という言葉があるように、それぞれの嗜好や好みに合えばいいのであって、合わない人には否定や批判をされることもある。
有名な作家や画家も、自身の哲学や信念を持って表現しているわけで、人に認められるためにあがきはしない。
万人に好かれようとがんばる必要はない。
それは現実的に不可能だ。
自分の考えと基準を持ち、「自分」を満足させられるなら、それ以上のことはないのだ。
それに、彼は恐怖を勇気で乗り越えた。
彼は除隊してすぐに復学せず、バックパック1つを背負ってインドへ旅立った。ひとりの時間を過ごし、新しい経験を積むために、まだ見ぬ国へ旅に出たのだ。
もし私だったら、そんな決断ができただろうか。
私は旅行にかぎらず、新しく何かを始めたり、挑戦したりして、周囲の常識から外れて、自分の道を突き進むことを恐れている。
この恐怖を乗り越えなければ、これ以上の変化は望めない。
恐れを感じることはなんの問題もないが、そのせいで一歩も踏み出すことができずに立ち止まっていては、何もできないままだ。自分の選択と決断で堂々と前に進むには、勇気が必要だ。
また、彼はあまり深く、長く考えることがなかった。
彼はなんでも早かった。
問題が生じたとき、選択と決断をするとき、私のように深く悩みすぎて時間を無駄にすることはなかった。「飲みに行こう」と言えばその日のうちに飲みに行く。その場で自分の考えと意見を言い、決断したらすぐに行動を開始する。
私はそんな彼とは正反対だった。考えれば考えるほど、悩みごとは雪だるまのようにふくらんでいく。
心配ごとは時間が経つほど次から次に浮かんでくる。それでは無駄な考えに囚われて、正しい選択と決断を行う時間を持てない。
選択と決断を迫られたら、長くてもその日のうちに終わらせよう。
翌日に持ち越した時点で、自分だけでなく、周囲の話や意見が頭の中を侵食してくる。人目を意識せず、自分を信じ、自分の心の声に耳を澄ませて素早く決断しよう。
「ダメもとでGO!」。決断する前に行動する
2017年、KBSで放送されたドラマ『サム、マイウェイ~恋の一発逆転!~』は、自分の信念と力を信じ、人にどれほど否定され、馬鹿にされても、自分の道をたくましく歩む若者たちを描いた青春ものだ。主人公のドンマンのセリフに、こんな言葉があった。
「人生は対策がなきゃいけないのか? わからないからこそおもしろいんじゃないか。計画を立てたって、そのとおりになるとはかぎらない。どのみちランダムなら、ダメもとでGO! するだけだ」
どれほど入念に準備をしても、計画どおりにいかないのが人生だ。
それなのに、私たちはできるだけ損をしないように、人に迷惑をかけないようにと悩み、配慮し、我慢して自ら心をすり減らす。
私のように決断を恐れる人たちにとっては、あまりに苦痛の時間だ。
「みんなに好かれようとせず、恐れを勇気で克服し、あまり深く長く考えすぎない」
これは、私とは正反対の性格をした友人から学んだことだ。
これからは、今までのマインドから抜け出さなければならない。
自分の選択と決断で、すべての人を満足させる必要はない。
悩み、心配する時間が長ければ、正しい選択と決断ができるわけでもない。
何よりも、選択と決断を迫られたときは恐れではなく勇気が必要だ。
私たちもそろそろ、胸を張って「GO!」しよう。
(本稿は、チェ・フン著 李明華訳『私はすべて自分で決める。』から一部抜粋・再構成したものです)